康生Ｖ！北京つないだ！準決でライバル棟田撃破…柔道全日本選抜体重別選手権

会見で涙を見せた井上

　◆柔道北京五輪代表選考会　全日本選抜体重別選手権最終日　▽男子１００キロ超級決勝　○井上（１分２８秒　内また）生田●（６日・福岡国際センター）　康生が生き残った―。男女計７階級を行い、男子１００キロ超級は北京五輪代表争いでがけっぷちに立たされている井上康生（２９）＝綜合警備保障＝が、今大会の最重量級で初の優勝。準決勝では、ライバルの無差別級世界王者・棟田康幸（２７）＝警視庁＝との直接対決を制し、決勝では同僚の生田秀和を破った。どん底からなんとかはい上がった井上は、１００キロ超級の最終選考会となる全日本選手権（２９日・日本武道館）で奇跡の北京切符獲得に挑む。

　北京への望みがつながった。井上は決勝で同じ所属の生田に内またで一本勝ち。０４年に１００キロ級で勝ち、アテネ五輪切符をつかんで以来、新階級では初の大会制覇。「最後まであきらめず自分を信じ続けたのが今日の結果。勝ちたかったんでうれしい」思わず涙が込み上げた。

　技でポイントを奪ったのは決勝のみ。かつてのような華麗な柔道ではなかったが、勝った。棟田との対戦は０２年の全日本選手権決勝で勝って以来６年ぶり。積極的に仕掛け、３０秒で相手に指導。互いに指導が与えられた後も腕固めを狙うなど、リードしても攻めた。優勢のまま試合終了。執念で勝利をつかんだ。

　初戦の立山戦も苦しみながら指導１つの差で勝利。「内容はいい内容じゃなかった。でも勝ちたかった」プライドをかなぐり捨て、泥臭く戦った。「今日は気持ち。それが一番よかった」負けたら五輪絶望という状況で、挑戦者として前へ出続けた。

一本勝ちで男子１００キロ超級を制した井上

　二人三脚で指導する父・明さん（６１）は先月末にウイルス性腸炎を患い体調は良くなかったが、この日も試合のたびに畳の近くまで下りて大声で指示。試合前もあえて連絡などはせず、この日も棟田に勝った後、「集中を欠くな」と声をかけただけ。「厳しい目が返ってきた。これなら大丈夫」父の信頼に息子も応えた。

　会場には１月に結婚した亜希夫人（２５）も駆けつけ夫の優勝に歓喜の涙。「あきらめないで」と励まし続けてくれた夫人の思いを受け「妻が一番苦しかったんじゃないか。それでも何一つ言わず支えてくれた。やるしかないですよね」愛する人の気持ちが康生を男にした。

　優勝してもがけっぷちの状況は変わらないが、ライバルの石井慧（国士大）が今大会を欠場し、高井も初戦で姿を消すなど“追い風”もある。残る戦いは全日本選手権。「今は全日本のことしかない。燃え尽きてもいいくらいの気持ちで臨む」北京への思いは封印し、柔道人生をかけた戦いに向かう。

　◆棟田ぶ然　○…勝てば北京五輪代表が濃厚となった棟田だが、準決勝で井上に攻め手を封じられ、指導２つを受けて敗戦。試合直後はぶ然とした表情でミックスゾーンではなく、会場の外へ向かった。１０分ほどして戻ってくると「負けたのは自分が原因」と淡々。２９日の全日本選手権に北京行きをかけるが「がんばります」とだけ話し、会場を後にした。

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