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市川染五郎 二枚目3種に挑戦

御園座「陽春大歌舞伎」


曽祖父・七代目幸四郎は三重県の出身。ゆかりの御園座で「結果を出したい」と語る染五郎

 歌舞伎の人気花形、市川染五郎が御園座「陽春大歌舞伎」で奮闘中だ。昼の部の序幕「源太勘当」と、夜の部の最後「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」に主演し、叔父・中村吉右衛門の胸を借りて「松浦の太鼓」の大高源吾にも挑んでいる。

■梶原源太■

 「源太勘当」は義太夫狂言「ひらかな盛衰記」の2段目。源平合戦・宇治川の先陣争いで有名な梶原源太を主役に、恋人(中村芝雀)をめぐる弟・平次(中村歌昇)との確執や、先陣争いの真相などが描かれる。

 「鎌倉一の風流男」と称された源太役に挑むのは初めて。「風情や品が大切な役。もちろん技術は必要ですが、たたずまいを型で表現しようとしたら、たたずまいでなくなってしまう。そこが難しい」と話す。

 母(中村東蔵)に合戦の模様を物語る「先陣問答」も見せ場のひとつ。先輩の中村梅玉からは「情景がお客様の目に浮かぶように」とアドバイスされたといい、「義太夫のノリを意識しながら語っています」。

■与 三 郎■

 せりふの技量と風情が求められる点では「与話情浮名横櫛」の与三郎も同じ。こちらは瀬川如皐の世話物で、大店の若だんなが放蕩(ほうとう)の末に落ちぶれ、ゆすりたかりを働く悪党になり果てた姿をリアルに映し出す。

 全9段のうち、今月は与三郎が元芸者お富(芝雀)と恋に落ちる「見染」と、2人の再会を描いた「源氏店」を上演している。人気場面だが、「縁のない役だと思っていました」と染五郎。「ある意味、自分が男前だと思わないとできない役。やりたいと言うほどの自信がなかった(笑)。それにウチでは祖父(松本白鸚)も父(松本幸四郎)も演じていませんから」

 とはいうものの、待望するファンは多く、以前から「やって欲しい役」のナンバー1だったらしい。

 十五代目市村羽左衛門、十一代目市川団十郎ら、すっきりとした風姿の二枚目が得意としてきた役。「源太とは別の意味で、らしさが必要。手の位置からせりふ回しまで細かな決まり事がありますが、気持ちの流れが切れないようにしないと。ゆすっていても、その裏にはお富への思いがあることを伝えられたら」

■大高源吾■

 もうひと役、「松浦の太鼓」の源吾は文武両道の浪士役。言ってみれば、今月は染五郎の“二枚目三種”が見られるわけだ。

 「家の芸は一昨年御園座でさせていただいた『石切梶原』の梶原のような男っぽい、太い役。あこがれはありますが、新たな個性を確立するためにも、与えられた役を一つひとつしっかり自分のものにしていかなくては」とさわやかに語る。

 映画やドラマに出演する一方、劇団☆新感線や三谷幸喜作品に度々参加。歌舞伎でも『鳴神』『鏡獅子』を始め初役に果敢に挑戦しており、義太夫狂言を得意とする叔父吉右衛門との共演も増えてきた。「一役ひと役に力を出し切るつもりで臨んでいます。叔父からは、芝居の息や大もとを学びたい」と目を輝かせた。

 公演は25日まで。(電)052・222・8222

2008年4月10日  読売新聞)
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