善光寺が聖火リレーのスタート地点に選ばれたのは、昨年10月。市の実行委は五輪とゆかりの深い善光寺を選び、寺側も快諾した。
3月のチベット騒乱直後、「同じ仏教徒が悲惨な目に遭っている」などの声は出たが、多くはダライ・ラマ14世の「五輪を支持する」との姿勢を範とし、リレー協力の方向でまとまっていたという。その流れを変えたのは世界各地で続いた聖火リレーにまつわる激しい抗議と混乱。「国宝の本堂に何かあればどうする」「参拝者の安全はどうなるのか」…。善光寺事務局や宿坊には、メールや電話などが相次いだ。
「聖火リレーに協力しないで」と書かれたはがきや、チベット人が中国兵に暴行されているようなシーンの写真が送られてきた宿坊もあった。
そして17日午後の善光寺が開いた局議と呼ばれる会議。「時期が時期だけにやめるのは難しい」との意見も出たが、辞退を求める意見が大勢を占めた。関係者は「『積極的に聖火リレーをやりましょう』との声は最後まで出なかった」と明かす。
市内では17日ごろから街宣車などが走っている。別の関係者は「本来は良い意味で注目されるイベントだったが、今回は何が起きるかわからない不安感があった」と背景を解説した。
長野商工会議所の加藤久雄会頭は「聖火リレーのルートに決まったときは、地元経済界も名誉なことと大喜びしたが、(善光寺の辞退は)賢明な判断と思う。チベット問題が取りざたされている中、会場を提供したら、チベット僧への弾圧を認めたことになる」と善光寺を支持した。
一方で善光寺参道の土産物店経営者は「聖火リレーによる経済効果は期待していなかったので、とくに影響はない」。市内の旅館経営者は「リレー前夜に入っている予約にキャンセルが出ないか心配」と話した。
【関連記事】
・
聖火ランナー思い様々 有森さん「それでも私は走る」
・
「仏教者の弾圧を憂慮」善光寺の寺務総長 聖火問題
・
「がっかり」「ほっとした」善光寺、聖火スタート地点辞退に思い複雑
・
善光寺辞退で「衝撃」 長野聖火リレースタート地点変更
・
「この嘘つきめ」と中国人ら サンフランシスコ聖火リレー