◇複雑な心境の市民
北京五輪の聖火リレーで、善光寺が出発地を辞退した18日。記者会見した善光寺の関係者は無念さをにじませ、警備計画の変更が迫られる県警は「全力で警備にあたる」と改めて表明した。一方で、聖火の到着を待ち望む市民は複雑な心境。県内には、驚きや戸惑いが広がっている。【聖火リレー取材班】
「文化財と一般信者を守る責任」。長野市役所で18日午後行われた、善光寺と長野市実行委員会の緊急記者会見。30人ほどの報道陣を前に、同寺の若麻績(わかおみ)信昭寺務総長は、苦悩の決断をこう説明した。
長野市での聖火リレーは、長野五輪を開催したことが縁で、07年4月に実施が決定。10月には善光寺をスタートし、エムウエーブなどを経由する18・5キロのコースも発表され、この半年間は目立ったトラブルもなかった。若麻績寺務総長は「本当は『どうしても』という気持ちがあったが、いろいろな事情から辞退するしかないと考えた」と無念さをにじませた。
一方、県議会総務警察委員会が同日開かれ、石井隆之本部長は、聖火リレーについて「長野市実行委員会などと緊密な連携のもと、県警の総力をあげ、聖火リレーが平穏に終わるよう、諸対策に万全を期したい」と述べた。
コース変更については実行委の判断だとして具体的な言及はなかったが、石井本部長は「一般論として警備の実施については、県警の責任において行われるものと考える。今回の聖火リレーの警備についても、県警が責任を持って実施したいと思っている」と述べ、県警のトップとしての責任感を示した。
街の声は複雑だ。リレーコースの中央通りで人形店を営む、西澤桂一さん(52)は「善光寺のスタート地点返上はさみしいが、中国に対する意思表示として必要かもしれない」と、善光寺の対応を評価。一方、和菓子店の男性は「10年前の長野五輪のように、にぎやかになるのは良いことなのに」と残念そうに話した。
4月19日朝刊
|