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【社会】

新型インフル ワクチンの流行前接種 優先順で難航も

2008年4月20日 朝刊

 発生すれば国内で約六十四万人の死者も想定される新型インフルエンザ。その対策で厚生労働省は、従来の方針を転換し、国が備蓄するワクチンの流行前接種に踏み切ることを決めた。まず約六千人が対象だがその後の拡大も検討している。「希望者全員に接種を」と求める声も出始めているが、限られたワクチンをどんな優先順位で打つのかなど、重要問題をめぐる実質的な議論は手付かずの状態で、混乱を懸念する声も出ている。

 新計画によると、最初の接種対象となる約六千人は、空港などの検疫所職員や感染症指定医療機関の医師ら、新型が発生したら感染の危険が大きい「最前線」の人たち。

 希望者を募る臨床研究の形で本年度中に接種を始め、安全性・有効性が確認できれば、来年度から他の医療従事者や警察、ライフライン関係者ら「社会機能の維持に欠かせない」約一千万人への接種を検討する。さらにその接種で高水準の安全性が確認されたら、一般国民への接種拡大も視野に入れるとした。

 この備蓄ワクチンが実際の新型ウイルスに効くかは未知数だが、基礎的な免疫をつけるには一定の効果が期待される。また有効期間は三年しかなく、早く製造した分は来年度が期限で、使わなければ廃棄せざるを得ないとの事情も背景にある。

 厚労省の新型対策指針は「社会機能維持者」として職種は示しているが、具体的な範囲や優先順位などは決まっておらず、実質的な議論もほとんど進んでいない。仮に対象をさらに広げるとなれば「誰に打つか」という優先順位の決定は、いっそう困難となりそうだ。

 

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