ファーストサーバ株式会社(以下,ファーストサーバ)では,1997年から共有・専用レンタルサーバー・サービスをLinux基盤で提供していたが,2005年にWindows Server 2003 R2基盤のレンタルサーバー・サービスをラインナップに加えた。その背景には,近年のインターネット人口の広がりにより,ネット上でWindows基盤の業務アプリケーションを動かしたいという傾向が強まったからである。
「業務アプリケーションになると,商習慣に合わせた顧客のニーズが多種多様に存在するため専用サーバーが望まれます。しかし,通常の専用サーバーのサービスは,管理や運用もユーザーが行うことが多く,本来のレンタルサーバー・サービスの魅力とはかけ離れた状況にありました。そこで,当社がこだわったのは,管理者権限をファーストサーバが持つことで,パッチ適用やセキュリティ対策といったハードウエアの管理・運用を当社が行うという点でした」とファーストサーバ 岡田 良介氏は同社のサービスの狙いを語る。
これは顧客にとってみれば,開発に集中できる環境がもたらされるという大きなメリットがある。しかし一方で,多種多様な業務アプリケーション開発においては,データベースの設定などで管理者権限が必要なケースもある。この課題を解消すればより開発環境の自由度は高まる。そこで考えられたのがVirtual Server 2005 R2による仮想サーバーサービスであった。
“レンタルサーバー業者がハードウエアのマネジメントを行い,顧客は管理者権限を与えられた自由度の高い開発環境を手にする”。このサービスを実現するため,同社はVirtual Server 2005 R2のリリース以前から,さまざまな仮想化ソフトを検討していた。「しかし,どれも当社が提供したいサービスを実現できるものではなかったのです。例えばオープンソースの仮想化ソフトでは,専用のゲストOSを準備しないと稼働しないため,維持メンテナンスが必要でした。また別のソフトでは稼働の手間はかかりませんが,コストが高くなってしまいます。ところがVirtual Server 2005 R2は,無償で提供されています。また,Virtual Server 2005 R2 は API が公開されており柔軟なカスタマイズが可能であり,利便性や性能が高く,安定稼働が望めました」と,ファーストサーバ 森川 裕和氏はVirtual Server 2005 R2の登場当時を振り返る。実際に評価テストを行ってみても,LinuxなどWindows以外のOSもすんなり動き,その性能の高さに驚いたという。こうしてVirtual Server 2005 R2の登場によって,同社が構想していたサービスの実現が可能となったのである。
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