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【正論】「天下り」に大甘な福田政権 政治評論家・屋山太郎 (2/2ページ)
松岡利勝農水相を自殺に至らしめた「緑資源開発機構」も法律に基づいて設置されたものだ。機構には林野庁から14人が天下り、補助金619億円を受け、傘下に8つの法人を設立してそこには30億円の補助金とともに217人が天下っている。
熊本県では7メートル幅の舗装した林道を建設していたが、付近の住民にも全く使われていなかった。この機構は全国にあと2000キロ余の林道建設を目的としている。同機構の前身は森林開発公団ですでに1兆円を費やして全く不要の林道事業を終えた。
誰が考えても林道建設などは地方に任せるべきもの。地方自治体は必要最小限のものを選択するはずだ。地方に任せない新たな機構を作って中央の事業を続ける目的は天下り先を確保するためだ。
衆院調査局によると2006年の天下り先は4500法人、天下り人数は2万8000人、それに流れた金は同年上半期だけで5兆9000億円に上るという。官僚があらゆる業界にはびこっている様がうかがえるが、これが癒着や腐敗の温床となっている。なぜかくも天下りが多いのか。官から民へのこの一方的にあふれ出るような天下り現象は先進国では全く例をみない。官僚がすべてを仕切るという明治以来の官僚内閣制の体質が、官にも民にも染み付いているからだ。構造改革が進まないのもこのためだ。
≪民の知恵あれば防げた失態≫
天下り先を創設し、官僚を天下らせるのは役所のピラミッド型の人事体制と不可分なのだ。局長になる際、同期の審議官は全員吐き出される。ある局長が次官になれば、同期の局長は吐き出される。新次官が任命されればより給料の高い天下りポストを得る。
現在、101の独立行政法人があるが、これらにはすべて設立の根拠法がある。グリーンピアも緑資源機構も官僚が族議員を使って立法させたのである。いいかえれば官僚が行政府と立法府の2府を握っている証拠だ。これこそが官僚内閣制の実態を物語る。
こういう悪習を止めさせるためには22歳でI種に合格すれば給与も身分もひたすら上がり続けるキャリア制度を廃止し、官僚制度を憲法にうたう「議院内閣制」を支える組織に作り替えなければならない。官民の人材交流が叫ばれて何十年もたつが、一向に進まないのは官と民の人事制度があまりにも違いすぎるからだ。
年金記録問題検証委員会にかかわって痛感したことだが、早い時点で民間からコンピューターの専門家を入れて局長か次長に据えていたら、あれほどのでたらめには陥らなかったろう。官の制度を民間と同様の総合職と一般職に変え、官の垣根を低くして若い段階から官民交流を行うようにすべきだ。官制の改革こそが、日本を活性化する決め手だ。(ややま たろう)