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作業で転落死の瀬戸大橋、塗装面積は甲子園の130倍

2008年04月19日

 本州と四国を結ぶ瀬戸大橋のうち、香川県坂出市の北備讃(きたびさん)瀬戸大橋の中央部付近で1日午前8時50分ごろ、橋の塗装作業をしていた徳島県鳴門市の塗装工坂野健治さん(当時16)が約70メートル下の海に転落した。坂野さんは翌日夕、転落現場から東に約16キロ離れた香川県・直島の南約4.5キロの瀬戸内海で遺体で見つかった。【4月1日】

写真はけでペンキを塗る作業員=07年7月、香川県の北備讃瀬戸大橋、本四高速提供

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 本四高速(神戸市)によると、塗装作業での死亡事故は、88年の瀬戸大橋開通の以来初めて。開通20年を迎える9日前の出来事だった。

 事故があった北備讃(きたびさん)瀬戸大橋(全長1611メートル)は、瀬戸大橋6橋の中で2番目に長い。関係者によると、坂野さんは本四高速の子会社ブリッジ・エンジニアリング(神戸市)から工事を請け負った鳴門市の塗装工事会社へ3月中旬に入社したばかりだった。

 事故当時、橋上は風が強かった。坂野さんは3人1組で作業にあたり、ペンキやはけなどの資材運びが主な仕事。橋中央部に設置されたゴンドラ式の作業車まで道具を取りに行く途中、橋東端の管理用通路から約4メートル下の作業車に飛び移ろうとして、バランスを崩したとみられる。

 この日、作業員約60人が塗装作業などをしていた。

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 北備讃瀬戸大橋は高さ184メートルの主塔や、道路・鉄道が通る重さ4万1300トンの桁(けた)の所々で上塗り塗装がはがれ、赤茶色の下地塗装が露出している。欄干や金網にもさびが目立つ。

 鋼製の瀬戸大橋にとり、さびは大敵。総工費1兆1700億円をかけた瀬戸大橋について、財政、技術面から架け替えは難しく、本四高速は「200年以上の長期利用」を掲げる。その延命作業の中心が、最も低コストのさび対策である塗装の塗り替えだ。

 塗り替え工事は、北備讃瀬戸大橋と櫃石島(ひついしじま)橋(同792メートル)で06年度から始まり、計画では17年間で6橋すべてを塗り終える。今年は2月上旬から工事が始まっていた。雨や雪が降っていないなどの気象条件が整った日に実施され、最大時には約80人の塗装工が、多数のボルトの突き出た鉄骨から傷んだ塗料をはがし、はけでペンキを手塗りしていく。

 瀬戸大橋全体の塗装面積は甲子園球場の約130倍、計約180万平方メートルに及ぶ。

 使っている塗料は、明石海峡大橋の建設時に開発されたフッ素樹脂。瀬戸大橋で使ったポリウレタン樹脂塗料よりも紫外線に強く、最低でも5年は長持ちするが、単価は従来の3倍だ。

 塗装費用は年間約6億〜7億円にのぼり、瀬戸大橋の年間の維持管理費約18億円の3分の1を占める。瀬戸大橋全体の塗り替えには約144億円かかる計算だ。

 橋全体を塗り終えるころには、最初に塗った塗料は17年が経過して耐用年数が来るため、再び塗り直さねばならない。さびと塗装のいたちごっこ。瀬戸大橋のどこかでいつも塗装が続けられている。

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 香川県警坂出署と坂出労働基準監督署は、墜落の危険のある高さ5メートル以上の場所で、18歳未満の労働者を働かせることを禁じた労働基準法に違反していた疑いがあるなどとして、転落原因や安全教育が十分だったか関係者から事情を聴いている。元請けのブリッジ・エンジニアリングは「経験の浅い作業員らが事故に巻き込まれないよう、今後は安全教育をしたい」と話している。

 今月13日、開通記念イベントの健康マラソンが催され、事故の影響で塗装工事がストップしたままの北備讃瀬戸大橋を、4500人のランナーが駆け抜けた。(高橋孝二)

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