米金融機関が1―3月期決算で引き続き信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)に関連した巨額損失を計上した。市場の反応が注目されたが、先週末にかけて米国の株式相場は急上昇し、ドル相場も反発した。損失処理の加速、人員削減などリストラの本格化、資本増強という経営立て直しの三本柱を、金融機関が具体的に示したからだ。
米銀最大手のシティグループはサブプライム関連で1―3月期に160億ドルの損失を計上し、昨年来の損失合計額は460億ドルに達した。スイスのUBSや米証券メリルリンチの損失額もそれぞれ300億ドルを突破。米欧主要金融機関22社のサブプライム関連損失額は円換算で合わせて約24兆円に膨らんだ。
日本の名目国内総生産(GDP)の5%近い規模の損失は巨額だが、当座の損失額が示されたことで市場では疑心暗鬼の増幅がひとまず収まったようだ。シティが9000人規模の追加リストラを発表するなど、金融機関は経費削減を矢継ぎ早に打ち出している。そのうえで、各社は損失計上で傷んだ自己資本を修復するため、一層の大型増資に乗り出す。
大手英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドが株主割当増資を実施すると伝えられたことが、先週末の市場心理を明るくした。他の英銀も追随するようだ。JPモルガン・チェースなど米銀も資本増強を計画中である。資本不足による信用収縮(キャピタルクランチ)を防ぐ手立てを講じつつ、損失処理を加速しているのが好感されている。
米証券首脳からは「最悪期は終わった」との声も聞かれるが、事態はなお厳しいとみるべきだろう。米景気減速で住宅ローンの延滞率は依然上昇しているうえに、住宅の担保価値は下落基調にある。カードローン、自動車ローンなど消費関連の焦げ付きも増えている。企業買収の資金調達に使われるLBO(借り入れで資金量を増やした買収)向けの融資も見直しが必要になっている。
米国では3月に大手証券ベアー・スターンズの破綻回避のため、JPモルガンによるベアー買収を官民連携で実施した。大型破綻は防ぐという暗黙の公的関与が市場心理を落ち着かせ、大手金融機関による資本調達の環境を整えているともいえる。対応の早さは評価できる。
とはいえ、サブプライム問題の根っこにある住宅ローンの焦げ付きや住宅価格の下落が続く限り、金融資産は劣化し、危機の火種は残る。無用な狼狽(ろうばい)は禁物だが、楽観論に浸るのも時期尚早である。