高速道路に侵入したキツネを避けようとして事故死した女性の遺族が東日本高速道路(旧日本道路公団)などに損害賠償を求めた裁判で札幌高裁は18日、同社に約5170万円の支払いを命じた。原告代理人によると、動物侵入による交通事故で道路管理者の責任を認めた判決は珍しい。末永進裁判長は「キツネがしばしば出没することは十分に予見可能だった」として、キツネの侵入防止柵を設けなかった同社の責任を認定した。
判決などによると、事故は01年10月8日午後8時ごろ、苫小牧市糸井の道央自動車道で発生。札幌市北区の看護師、高橋真理子さん(当時34歳)が乗用車で走行中、路上に出てきたキツネを避けようとして中央分離帯に激突。後続の乗用車に追突され、頭を強く打ち死亡した。現場付近はシカなどの侵入を防ぐ有刺鉄線が張られていたが、キツネの侵入を防止する対策はとられていなかった。
高橋さんの両親は04年、旧公団と後続車を運転していた男性に計約8920万円の賠償を求めて提訴。1審判決は男性に約1970万円の支払いを命じたが、同社の責任については「キツネ侵入防止柵は全国的に普及していない」と否定した。
同社は道央道全線に侵入防止柵を設けるには約40億円かかるとして「法的に義務付けられていない」と主張していたが、高裁判決は「通常予測される危険に対応した安全性を備えるべきだ。予算上の制約は責任を免れる理由にならない」と判断した。
同社北海道支社は「判決の内容を詳細に吟味したうえで対応したい」とのコメントを出した。【芳賀竜也】
2008年4月19日