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イラク:希望を失わせるベクテル社の撤退
2006/11/24

【バグダッドIPS=ダール・ジャマイルとアリ・アルファデリ、11月9日】

 米国の巨大建設企業ベクテル社がイラクからの撤退を決定した。多くのイラク人は裏切られたという思いで、イラク再建のわずかな望みも失われたと考えている。イラク共産党員の1人は「サダム時代の方がましだった。アメリカは石油の略奪とイラク人の殺害しかしなかった」とIPSの取材に応じて語った。

 ブッシュ政権に近いベクテル社の幹部は先週、戦火により荒廃したイラクでの業務を終了すると発表した。同社は23億ドルのイラク復興資金を受け取りながら、着手した仕事のほとんどを終了しないままイラクから立ち去ろうとしている。

 イラクの状況はすべての社会基盤に関してサダム・フセイン支配の頃よりも悪化している。電気は1日平均2時間しか使えない。失業率は70%。68%のイラク人は安全な飲料水を手に入れられず、下水道を利用できるのは19%だけだ。英国の医学雑誌ランセットは、イラク侵攻・占領の結果65万5,000人以上が死亡したと推定している。

 医療NGOのMedactによると、診療所の建設が進まず、簡単に治療できる下痢や呼吸器系の病気で多くの子供たちが命を落としている。142の初期治療の医療施設を建築する2億ドルのプロジェクトは、わずかに20施設を建築しただけで資金が底をついた。

 電気が不足して石油の需要が高まっているにもかかわらず、石油産出国イラクで石油が手に入らない。「莫大な金額がつぎ込まれているはずなのになぜ電気事業の復興が進まないのか」と電気省の技師は嘆く。電気省の2人の大臣は汚職で告発されている。

 ベクテル社はチェイニー副大統領が勤務していたハリバートン社などと同様に、最初に有利な条件で復興事業を請け負った。こうした巨大企業は事業契約を中小の会社に売り、それがさらに下請けに売られて、実際に安値で請け負うのは経験不足のイラクの建築業者なのでまともな仕事はできない。

 だがベクテル社の撤退を米国の撤退の始まりと見て、イラクに繁栄をもたらす英雄であり救世主を標榜していた米国が逃げ出していく姿を冷ややかに歓迎する政治評論家もいる。米国企業の撤退が始まったイラクの現状について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan加藤律子

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(IPSJapan)

バグダッドIPSのダール・ジャマイルとアリ・アルファデリより、米国の巨大建設企業ベクテル社が撤退を決定したイラクの現状について報告したIPS記事。(IPS Japan加藤律子)
















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