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社説:チベットの騒乱 武力鎮圧、反発招くだけ
中国チベット自治区ラサで起きた大規模な暴動は甘粛省や四川省などに拡大し、騒乱状態にある。暴動は一応、沈静化に向かっているようだが、それは表面的な現象にすぎず、深刻さに変わりはない。
中国の治安当局が町を封鎖するなどして、いわば強制的にコントロールしているのが実態だからである。
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は亡命政府があるインドで、事態打開のため中国指導部との会談を望む姿勢を示した。これに対して中国側が応じる可能性は、残念ながらほとんどない。
しかし中国政府は、暴動への武力鎮圧に対して国際社会が強く非難している現実にもっと目を向けるべきだ。武力で解決するやり方は前近代的であり、国内外の反発を招くだけである。話し合いによる一日も早い平和的解決を望みたい。
今回の騒乱で不気味なのは、実際にどんなことが起きているのか、正確な情報が伝わってこないことだ。中国当局が外国メディアの監視の目を恐れ、記者を排除していることも大きい。
流血の事態になったことは間違いないが、一体何人が死傷したのか。死者16人を出した1989年のラサ暴動を上回るのは、どうやら間違いなさそうだ。僧侶ばかりか、16歳の少女が犠牲になったとの情報もある。
仮に警察などが僧侶や市民に向かって発砲している映像が流れたら、どうなるか。国際社会が非難の声を一層強めることは火を見るより明らかである。
だからこそ中国当局は報道管制を強めているのだろう。しかし、いくら「戒厳状態」とはいえ、記者を締め出すような行為自体、異常なことである。表面を糊塗(こと)しても、いずれ事実は明らかになるものだ。
14日にラサで暴動が起きたころ、北京では全国人民代表大会(全人代=国会)が開かれていた。全人代は18日に閉幕し、胡錦濤国家主席と温家宝首相を中心とする「胡—温」体制が後半5年のスタートを切ったばかり。8月の北京五輪を控え、反政府デモに訴えた勢力は、絶妙の時期を狙ったといえる。
その勢力とは何か。温首相は「ダライ・ラマ集団が企て扇動した」と決め付けるが、実際のところは不明である。
ダライ・ラマは90年ごろからチベットの独立要求を放棄し、「自治権拡大」を求めて中国政府と水面下で接触してきた経緯がある。そうした「非暴力」穏健路線に反発する若手の独立急進派が暴動に関与した可能性もあるだけに、中国政府には冷静な分析と行動を求めたい。
五輪の根本原則は「あらゆる民族差別なく、友情、連帯を通じて、平和でより良い世界をつくる」ことにある。フランス外相は北京五輪の開会式への不参加検討に言及したが、事態が悪化すれば五輪をボイコットする動きが出てきかねない。
中国は日米と並ぶ経済大国になった。しかし共産党による一党独裁の政治構造に変わりない。グローバル化で各国との相互依存が進む中で、胡指導部はどのように事態を収拾させるか。大きな試練に直面している。
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