せっかくの名城なわけですから、観光客はもちろんのこと、子どもたちにも見せてあげたいですよね。
「子どもたちに城が見せてくれる夢みたいなものを感じさせてあげたいね。城ってものはさ、幕末から明治にかけて、幕府の支配の象徴的な存在ってことでそのほとんどが取り壊されちゃったでしょ」
まぁ、当時の時代背景を考えるとそういうのもいたしかたないというか。
「しょうがないことではあるんだけどね。でも、今こそいろんなとこでさ、都道府県なんかがさ、市や街でもいいし村おこしのひとつでもいいから、残っている城の復元をしてほしいって思ってるんだよ」
日本を代表する江戸城なんかは是非復元してほしいとこですよ!
「あなたいいこと言った! ボクが東京に一番やってほしいと思っていることはだね、ズバリ江戸城の復元なんだよ」
江戸城の復元ですか! まぁ、かなり難しそうですけどね。
「そうなんだよねぇ(苦笑)。ボクはことあるごとにテレビやラジオや雑誌なんかで江戸城の復元について声を大きくしているんだけど、やっぱりダメだねぇ。前にもNHKさんの番組で江戸城復元の提案したら即却下されちゃったから。しかもその部分は放送すらされなかった」
全カットですか(苦笑)
「NHKさんはやりたかったみたいなんだけど、江戸城って宮内庁の管轄だったことで、そういうことを話題にしないでくれと宮内庁からNGがきたみたい。文化遺産としての江戸城という表現ならOKだけど、そういうのは話題すら出すのはダメってね」
お固い連中ですからねぇ。東京のど真ん中に城がデデーンって鎮座してるって日本にとっても最高だと思うんですけど。
「ホントこれはね、冗談抜きにして、日本が世界に誇れるものって東京だと思うし、その東京のシンボルとして江戸城はものスゴくいいと思うんだよ。正直、お城の“台”は今もそのままあるわけだし、そこに上物を建てるだけでいいんだから! ボクなんて100億円の見積もりまで出させてるんだよ(奮)」
アハハハハ! でも、海外で同じ状況だったらやってる可能性はかなり高いですよね。実際、ドイツなんかは古城の復元にかなり力を入れていますし。
「その通りだよ。日本って国は自国の自慢できる文化遺産に対してあまり考えていないというか、不思議なくらい消極的なんだよね。江戸城なぁ......、誰か復元してくれないかなぁ......、石原(慎太郎/都知事)さんはそういうのをやってくれそうな気がしてたんだけどね」
お台場に都営の合法カジノなんかを作ろうとする前に、まずは江戸城だろ! と?
「『カジノとかそういったものも大切なんだろうけど、まずは東京のシンボルじゃないですかね石原さん!』ってホント言いたいよ。江戸城を復元してさ、そこで各国の首脳を集めて江戸城サミットなんかしたら最高じゃない?」
江戸城サミット! いいですねぇ。
「城でサミットなんかすればさ何もかも上手くいくってば! 世界の平和に一番の近道かもしれない。城ってのはね、とにかくいろんなものを計って建ってるわけなの。風水的なもので何もかも計算されて作られているんだよ。ただ広い平地がそこにあったからってことでそこに建っているわけじゃなくて、一番いいところに建ててるんだよ。いちばんいい空気っていうのかな」
闘いの信念が宿るだけでなく?
「例えば、そこに行くだけで気分が休まるとか、癒されるとか、もうとにかくいろんなものがホッとするというね。そういう空気を出すために、そういった空気が出る土地に建てられているんだよ」
城にはリラクゼーション効果なんかもあるんですか!
「ある! だってさ、今って城ブームなんでしょ?」
え!? そうなんですか?
「(無視して)テレビで見たんだけど、今って若い女性のみなさんの中で城を見に行くのがブームなんですよ! 城ってお年寄りしか行かないような場所ってイメージなんだけど、最近は女性がよく行くんだって。もう城へ行くと必ず女性がいる」
城には必ず女性がいますか!
「テレビで見たんだけどね。なんかこう、女性が城に興味を持ち始めてるんそうなんだよ。女性ってのはそういう癒しみたいなものが好きでしょ。城が持っているそういう神秘的な力を女性は無意識に感じているんじゃないかな」
女性って風水とか占いといった類いのものが好きですもんね。
「テレビで見たんだけど、最近特にそうだっていうよね。城にはさ、そういう神秘的な力がたくさんあるんだよ。城ってホントいいよねぇ(しみじみと)」
デートコースにも最適といったところでしょうか?
「そりゃもうバッチリですよ。城は男女の愛の告白なんかにも最適ですよ!」
城は告白最適スポット! いやぁ、藤波さんの城話は心の底から素晴らしいですね。ちなみに、藤波辰爾が選ぶ日本の名城TOP3なんてのがあれば教えてくださいますか? そういえば、先ほど一番好きなのは彦根城っておっしゃって......。
「(遮って)1位はもうダントツで姫路城ですよぉ!!」
あれ? 姫路城ですか。
「これはもうね、とにかく大きいし、優雅だし、国宝であり世界遺産でもありますからね! 城のプラモデルなんかも姫路城が一番売れているっていうしね」
今号の特集に出演されている城プラモ国内ナンバー1のシェアを誇る童友社の内田“次期”社長も姫路城が一番売れるっておっしゃってました。
「でしょう! とにかく姫路城はいい城だよね。時代劇なんかで江戸城が映ってたりしても、その映像のほとんどが姫路城ですからね。ボクのファンや、このインタビューを読まれている読者の方たちにも是非、姫路城は一度でいいから生で体感してほしいね!」
全国8900万のOG読者はきっと姫路城に興味を持ち始めたにちがいありません! で、2位は?
「熊本城だね! 姫路城や大阪城とか名古屋城やなんかはもう落ち着いた城って感じがするでしょ?」
たしかに、徳川時代の天下泰平感が満ちあふれていますよね。
「でしょ? でも、熊本城っていうのは今でも戦えそうな雰囲気をかもし出しているんだよね。戦の準備を未だに備え続けている男の城というか、戦国時代の臭いがする感じがして好きだね。戦いという部分が色濃く残っている血の気が多い城だよ」
まさに闘う男の藤波さんにもってこいの城じゃないですか! 熊本での試合前にはもちろん必ず行ってらっしゃったと思うんですが、熊本城でのエピソードなんてあります?
「う〜ん、特にないねぇ(あっさりと)」
了解しました! では3位は?
「彦根城だね」
やっと出ました! 30分程度で1位から陥落した悲しみの城(笑)
「彦根城には住みたいよね、単純に。あの城はもう心のどこかで”彦根城はボクの城”って思っている部分が少なからずあるんだよ(満面のドラゴンスマイルで)」
彦根城はボクの城! いちいち最高です(笑)
「見るたびに『あぁここに住みたいなぁ』って思うんだよね。もしもう一度、藤波城の見積もりをどこかにお願いする機会があったら絶対に彦根城のイメージで進めようと思ってるんだよ。まぁ、ボクはこんな感じで城を楽しんでるけど、ひとつアドバイスさせてもらえるなら、城の見るときに歴史的な情報を少しでも頭に入れておくともっと楽しくなるよ。例えば城の色ね」
城の色ですか?
「そう。姫路城や名古屋城、想像上の江戸城なんてのは壁が白いでしょ。で、熊本城や松本城は黒いんだよ。白いのは徳川時代の城、逆に豊臣時代のものは全部黒いんだよね。城の色を見て『これは豊臣だな、これは徳川の力が強いな』とか、そういうのを知っているだけでもおもしろいよね。そこから歴史的なところに入っていくのもいいと思う。大阪城なんてのは豊臣の城だったんだけど、徳川に落城させられて、城を跡形もなく取り壊されてしまった。で、その瓦礫は全て地中に埋められて、その埋めた土地の上に今の徳川方の大阪城が建てられたんだよ。そういうのって、少なくとも男は燃えるものがあるよね」
いつの世も、男は歴史絵巻的なストーリーが大好きですからね! 藤波さんも戦国武将たちが織りなす戦絵巻はお好き?
「もちろん大好き! 細かいことはわかんないけど、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康っていう戦国武将はポピュラーではあるけど好きだね。でもまぁ、プロレスラーが一番憧れるのはやはり信長だろうけど」
闘う風雲児というか、とにかく最強武将ってイメージがありますからね!
「今のレスラーに置き換えるなら信長はもう確実にアントニオ猪木! 猪木さんだよね。ジャイアント馬場さんは秀吉かなぁ」
たしかに猪木さんは信長ですね(苦笑)
「もうイケイケだしね。失敗するって自分でわかってるときですらもなぜか不思議なくらいイケイケだもん(苦笑)。逆に馬場さんは石橋を叩いて渡るって感じ。もちろんイケイケな部分もあるけど、どちらかといえば秀吉かな」
(故・)ジャンボ鶴田さんや長州力さんなんかはどうですか?
「長州は上杉謙信って感じがするね、あの虎視眈々と相手を狙う目はまさに謙信的だよね。鶴田はどうかなぁ......、彼は今川義元かな。彼を中心にボクたちの世代は戦国時代になっていろんな戦争が勃発したからねぇ、どうにも深いなこりゃ(笑)」
いやぁ、昭和プロレスファンにはたまらない話ですねぇ! でも、家康が見当たりませんが?
「残念ながら、プロレス界に家康的な人間はまだ現れてないね。まぁ、家康が君臨するほどプロレス界はまだ安定していないからかもしれないけど、う〜ん......、家康になり得るレスラーっているかなぁ......」
藤波さんがプロレス界の家康襲名に名乗りを挙げればいいじゃないですか!
「ボクが家康? どうかなぁ......。まぁ、ボクは家康が一番好きだから問題はないんだけど。今の時代、イケイケなのは必要かもしれないけど、それだけじゃなく引くこともできる人間。家康のように物事の抜き差しの塩梅が上手い人間が必要だとボクは思うね。でも、まだ今のプロレス界には家康は必要ないというか、いたらいけないよ」
それはまたなぜですか?
「今のプロレス界に必要なのはある意味、血なまぐさい戦国時代の危ない感じだと思うんだよね。家康が築いた天下泰平の時代はまだ早いよ。ボクや長州が新日本でしのぎを削っていた頃っていうのはもうみんながみんな戦国武将だった」