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2008年04月17日付・夕刊
(6)脳外科守る近森方式
「高知医療センターで今、脳卒中を診てるのは脳神経外科の先生だけですよね。先生方は皆、疲れている。あなたが病院長だったらどうします?」 記者「患者の受け入れを減らすか、新たな脳外科医を探すかですね」 院長「ところが医師はいないし、患者も止められない」 記者「脳梗塞(こうそく)を診てくれる神経内科医を探すか、高知赤十字病院のように救急医を手厚くするかですね」 院長「しかし、現実は両方とも難しい」 記者「脳外科医の報酬を上げるか、慰めるかですねえ」とつぶやくと、院長はこう言った。 「答えは、手術を要しない患者さんは、内科の中堅までの先生に診てもらうんです。脳外科や神経内科の先生がまず診て『この方針で診てください』と指示を出す。そして、脳外科の先生も一日一回、必ずチェックすればいいんです」 内科とは循環器科や消化器内科などのことだ。しかし、内科も忙しいから余裕はないはず。疑問を呈すと「医療センターなら無理でしょう。でも、当院はできるんです。内科の先生は皆、一応、脳卒中に対応できる体制にしているんですよ」 そう言って、神経内科を例に持ち出した。同科は今、医師が三人いるが、昨年四月までは山崎正博部長(58)一人だった。 「脳卒中のうち六割は脳梗塞。四月まで膨大な数の脳梗塞の患者さんを一人で診てくださっていた。なぜ、それができたか。診察後は内科の先生方が主治医をしてくださってたからです。これも一つのチーム医療です」 医療センターでは逆に神経内科が十九年六月までに三人とも退職。それ以降、脳梗塞患者はすべて脳外科が診ており、大きな負担になっている。 その点、近森は“大内科制”を敷き、診療科目は別々でも、各科が重複して診療する。それにもともと、脳梗塞は内科の疾患。というわけで、脳疾患患者が来たらまず救急外来で救急医が診察。神経内科の対応で済む場合はそちらへ。外科的処置が必要な場合は脳外科医を呼ぶという。 「脳外科の先生には二つのバリアーがあるんです。だから、雑用に追われず専門性も高められるし、夜中の手術もしっかりできるんですよ」 高知赤十字病院の救急部とはまた違う形態の「防波堤」があるようだ。そして、院長の話は医療センターの経営体制にも及んだ。 言わんとするところは要するに、立派な建物に経費を掛け過ぎた上、看護師らの給料も民間より高い。このまま総花的運営が続くと赤字は肥大化。それゆえ人員増もできず、今居るスタッフは消耗するだけ。早急に「選択と集中」を施さないと破たんするという。 「公立病院に税金を山のようにつぎ込むやり方は今後、難しいでしょう。今の形でどう頑張っても黒字化は無理。それなら、赤字の縮小を考えるべきです」 横で聞いていた川添昇管理部長(60)も言った。 「この際、医療センターは一番の重荷である救急を、ヘリ搬送対応ぐらいに整理すべきでは。うちのような体制でないと救急は難しいと思います。診療対象を、民間ではできないような高度医療に特化すれば、政策医療ということで、多大な税金を投入しても県民は納得してくれるでしょう」 医療センターから救急を外せ、とは何と大胆な。そう言い切れる自慢の体制をのぞかせてもらった。 【写真】近森病院の救急外来前に連なる救急車。高知市の真ん中だけに需要が多い(高知市大川筋1丁目) |
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