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2008年04月15日付・夕刊
(4)呼ばれぬ脳外科
対応したのは、救急部の広田誠二医師(29)。 診察し、「あっちこっちに脳梗塞のあとがあるけど、出血してないしなあ…」「脳の細い血管が詰まったと思うけど」と言いながらCT、MRI撮影のため、患者の乗ったベッドを押して救急外来(ER)を出ていった。 外科当直の脳神経外科、泉谷智彦医師(45)は、一時間前にウオークインで来た上肢まひの患者を診察中だった。 壁一つ隔てた部屋にいたので顔を出すかと思ったが、意外や意外。ウオークイン患者へのMRI画像の説明を済ませるとカルテを打ち始めた。高知医療センター(医療C)なら、間違いなく出番のはずだが…。 救急車の患者は、救急部が診断を付けて各科に引き継ぐ決まりらしい。 午前八時すぎ、今度は転落して頭を強打、意識障害の人が運ばれてきた。瀕死(ひんし)の状態。だが、ここでも泉谷医師の出番はまだだ。早めに出勤してきた別の救急医が対応。その後に、MRI撮影から戻ってきた広田医師と、泉谷医師が一緒に診た。 そして、広田医師は転落患者の家族に症状を説明。一方の泉谷医師は、小脳梗塞の患者をICUに運び、家族に詳しく説明を始めた。 その間に、今度は薬物中毒でけいれんを起こした人の救急車が来た。救急部は朝からフル稼働。勤務拘束が正午すぎまでの広田医師の帰宅は夕方になった。だが、そのおかげで泉谷医師をはじめ各専門科の医師は本来の仕事に専念できたのだ。 その数日後の週末、私は二度目の日赤取材をしてまた驚いた。脳外科四人のうち、二人が連休を取れたのである。 日赤の名誉のために書くが、両日とも暇だったわけではない。土曜は、脳外科だけでも慢性硬膜下血腫や脳挫傷で五人が入院。日曜も昼すぎに動脈瘤(りゅう)破裂によるくも膜下出血患者が入り、簡単な緊急手術も二つした。 ERも日曜は昼すぎから一時間半の間に心肺停止、くも膜下出血、心筋梗塞と立て続け。だが、ER当直は経験豊かな西山謹吾救急部長(50)。研修医や看護師に素早く指示を出し、初期対応の後、各科の当番医に引き継ぐと、すぐさま次の救急車に対応。展開を読み切っていた。 「慌てることはないんです。呼吸器と循環器さえしっかり診ていれば」と西山部長。ちなみに脳外科医が呼ばれたのは、患者到着から二十分後。くも膜下出血と診断し、患者のデータがそろい、初期対応も終わってからだ。司令塔がしっかりしていると無駄がなく、他科の医師は随分楽だ。 医療Cならあらかじめ専門科の医師が呼び出され、最初から最後まで対処しているケース。疲労のたまった専門科の医師に診てもらうのがいいのか、それとも幅広い疾病に対処する救急医にまず判断を仰ぐ方がいいのか。二つの病院システムの違いに戸惑っていると西山部長が言った。 「近森病院(高知市)の救急はまた違うと思いますよ。あそこのERは三人のうち二人が脳外科医なんです」 そう言われるとまた、違いを知りたくなる。取材を申し込むと、病院経営に一家言ある院長が自ら応対してくれた。 【写真】救急部の活躍で本業に専念できる高知赤十字病院の脳外科医(高知市新本町2丁目) |
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