■車ユーザー負担の税
ガソリンにかかる税金などの「道路特定財源」の暫定税率が1日に期限切れとなった。その結果、ガソリン価格は下がることになり、全国各地で「値下げ合戦」が始まった。一方では、歳入欠陥が現実味を持ったことにより、中止・凍結となる道路工事が少なくないなど、列島は「暫定税率騒動」に包まれたかのようだ。騒動の発端となった道路特定財源とは――。
◇暫定税率は「上乗せ分」
私たちが自動車を購入した場合、まずは取得価格の一定割合が「自動車取得税」として徴収される(3月31日までは5%)。その後も、ガソリンを給油するたびに「揮発油税」と「地方道路税」がかかり、車検ごとに「自動車重量税」がかかる仕組みになっている。
これらの税金は国や地方自治体が徴収し、いずれも国道や都道府県道などの建設・整備に使うことが法律で定められている。自動車を走らせるためには道路が必要で、その道路の建設・維持費は自動車ユーザーが負担するという考え方だ。
消費税や所得税などの税金は社会福祉、教育、環境、防衛、公共事業など幅広い分野に使われ、使い道が限られないことから「一般財源」と呼ばれている。これに対し、特定の分野に使い道が限られる税金を「特定財源」と呼ぶ。
道路に使われる税金が道路特定財源で、自動車取得税、揮発油税、地方道路税、自動車重量税のほか、主にディーゼルエンジンに使う軽油にかかる「軽油引取税」、タクシーなどが使うLPG(液化石油ガス)にかかる「石油ガス税」がある。
ガソリンを給油する際には、暫定税率が期限切れになる3月末までは、揮発油税と地方道路税で合わせて1リットルあたり53・8円が課税されていた(これとは別に、1リットル153円の場合、消費税が7・3円課税)。揮発油税と地方道路税の税率は本来、法律で1リットルあたり原則28・7円と定められている(本則の税率)。実際に課税されていた53・8円と28・7円の差額の25・1円(軽油は17・1円)こそが、今回期限が切れた暫定税率。つまり、本来の税額に上乗せしている部分を指す。
ところで、暫定税率とは文字通り、一定の期限を設けて暫定的に税率を上げたり、下げたりする制度だ。これまでも5年おきに期限切れは訪れていたが、政府がその都度、国会に税率延長の改正法案を提出し、与党の賛成多数によって可決、成立してきたため、税率は下がることはなかった。
しかし、今回は勝手が違った。衆参両院で与野党が逆転した「ねじれ国会」の中、民主党が「道路を聖域化せず、福祉や教育、環境など国民のニーズによって税金の使い道を決めていくべきだ」と強く主張。道路特定財源の一般財源化と暫定税率廃止を2本柱で訴え、政府提案をはねつけたため、暫定税率の期限は切れ、ガソリンや軽油が値下げされることになった。自動車取得税も税率は5%から3%に下がり、自動車重量税の暫定税率は4月30日に期限が切れる。
道路特定財源は08年度予算で国と地方を合わせて5兆4043億円、このうち暫定税率分は2兆6004億円だ。5兆4043億円のうち、国税として徴収されるのは3兆3366億円だが、国の一般会計や道路整備特別会計を経由して国の道路整備に使われるもののほか、国から交付金などとして地方に配分されるものもある。
一方、国会論戦などを通じて、道路特定財源として徴収された税金が、国土交通省のタクシーチケットやカラオケセット購入など道路建設・整備以外に使われていたことが判明。税の使い方が問題になった。【川口雅浩】
2008年4月4日