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未来育て:第1部・男と少子化/3 首都圏に住んでいたら、3人目は…

 ◇首都圏に住んでいたら、3人目は選択しなかったかも…

 ◇職住近接のまち、共働きの妻と育児分担

 静岡県西部の袋井市。若い世帯の流入が目立ち、人口1000人当たりの06年の出生率は10・7。全国平均8・7、県の8・8と比べても若いまちだ。

 「緑が多く、子どもを連れて行く所もたくさんある。買い物も便利だし生活しやすい」

 市北部の住宅地に住む木本孝さん(36)は、満足げだ。妻の瑞穂さん(34)と7、5、1歳の3人の息子たちの5人で暮らす。

 周辺の分譲住宅は70坪の土地付きで3000万円台。「普通のサラリーマンでも家が買える。特にうちは共働きなので、この額ならローンのためにあくせく働かなくていいのがありがたい」

 子育てを後押ししているのは、住環境ばかりではない。

 勤務先は隣町の磐田市にあるヤマハ発動機。工場で技術職に就き、職場まで車で30分。子どもたちを風呂に入れられるよう、帰宅目標時間は午後7時だ。

 「実際に間に合っているのは週に2、3回かな」と笑うが、ここでは7時帰宅に現実感がある。今月12日まで、三男凌太君のために1カ月半の育児休業を取った。思い通りにいかずイライラすることもあったが、凌太君から「おどうさん」などと少しずつ言葉も出るようになり、成長の場面に立ち会えたのが何よりだった。

 凌太君は1月から保育所に預けるつもりだった。しかし、空きがなく、ヤマハのグループ会社に勤める瑞穂さんが育休を終え3月に職場復帰する代わりに、育休を取り4月からの入所に備えた。

 育休は長男の時に続き2回目。共働き家庭で育った孝さんは、夫婦2人が協力して子育てするのは当たり前、と考えていた。人事評価が気にならないわけではないが、「1カ月くらいの休みは、長いサラリーマン生活で考えると誤差みたいなもの」と割り切った。

 今回、職場の上司に休みを申請しようとしたら初めは「男も取れるの?」と驚かれた。だが社内では、95年に育休制度ができて以来、10人以上の男性が育休を取っている。利用を理解する職場の雰囲気もできている。「家事、育児を妻と分担していきたい」という考え方を説明すると、後はすんなりだった。

 子どもたちが病気の時も、夫婦で半日ずつ交代で休んで看病し、両方が1日1度は会社に顔を出せるようにした。瑞穂さんの仕事が忙しい時には、孝さんが早めに帰り、先にいったん帰宅していた瑞穂さんが職場に戻るという、リレー方式で乗り切ってきた。

 こうした協力を応援する土壌が会社内にあった。3人目の決断について、瑞穂さんは「夫に協力してもらえば、もう1人増えても手がかかるのはそんなに変わらないかな、と思って」とほほ笑む。

 仮に首都圏に移り通勤時間などが長くなれば、子どもと接したり家事をする時間が減る。瑞穂さんもフルタイムでは働けず、経済的にも厳しくなり、もしかしたら子ども3人は選択しなかったかもしれない、というのが夫婦の共通した認識だ。

 「都会は都会でいいところもある。でも職住近接している今の環境があるからこそ、仕事と家庭をバランスよくやっていける」。孝さんの実感だ。【山崎友記子】=次回は26日掲載

 ◇帰宅遅い理由、9割が「仕事量」

 20~30代の既婚女性対象の明治安田生活福祉研究所の「結婚・出産に関する調査」で、夫の帰宅が午後10時以降の世帯で、帰宅が遅い理由のトップは「仕事量」であることが分かった。9割以上の妻が理由に挙げ、さらに帰宅が10時を過ぎる夫の3人に1人は家事分担がゼロだった。

 調査は2、3月、全国の未婚・既婚男女を対象に無作為抽出で行い、7908人(有効回答率60・8%)から回答を得た。うち既婚女性は1992人。

 帰宅時間ごとに遅い理由(複数回答)を尋ねたところ、夫が午後10時以降に帰宅する世帯では、仕事量が多いが最も多く92・1%。以下、通勤時間が長い16・7%▽上司や同僚の目が気になり帰りづらい10・1%▽アフター5の付き合いが多い9・8%▽家事・育児に協力するつもりがない7・6%--の順だった。

 家事の分担割合は帰宅が早いほど高く、午後6時前は平均で23%。一方、午後10時以降は11%で、分担ゼロも37%に上った。

 また、今後ほしい子どもの数は、300万円未満1・10人▽300万円以上900万円未満0・94人▽900万円以上0・82人--と年収が上がるほど減る傾向になった。世帯年収が高いほど概して共働き率は高く、所得など出産で失うものが多いという事情が背景にあるとみられる。【有田浩子】

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 ■06年の県別出生率

1 沖縄県  12.1

2 滋賀県   9.9

3 愛知県   9.8

4 福井県   9.1

4 神奈川県  9.1

6 大阪府   9.0

6 福岡県   9.0

 ※人口1000人当たり、厚生労働省人口動態統計

毎日新聞 2008年4月19日 東京朝刊

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