廃材を利用した鉄道模型作りに、筑前町依井の深野藤夫さん(70)が取り組んでいる。昨年末から、既に3台を完成。「体の続く限り、制作活動を続けていきたい」と日夜、汗を流している。
現在の筑前町で生まれ育った深野さんは、幼いころから、国鉄甘木線の機関車を眺めるのが好きだった。夕暮れ時に田んぼの真ん中を煙を出しながら走る機関車を見て、もの悲しい気持ちになることもあった。10代で大工となった後も、暇さえあれば、甘木駅に機関車を見に行ったという。
模型制作のきっかけは昨年末。自宅の書斎を整理していた深野さんは鉄道の写真が載った図鑑を発見。若いころから抱いていた「鉄道模型を作ってみたい」という思いが一気に膨らんだという。
知人から譲り受けた廃材の鉄や木材を使って「C62形蒸気機関車(SL)」を作ることにした。大工時代の経験を生かして図面を描き、専用の機械を使って制作を開始。ただ、車輪など可動部分の制作が難しく、3回も作り直したという。
苦心の末、約2カ月後に長さ約1.2メートル、重さ約60キロの模型が完成。模型は前後に動かせるほか、ライトを点灯させたり、お香の煙を煙突から出したりできる。「完成後の数日は毎朝、子どものように機関車を眺めていました」
制作には極力、費用をかけたくないという深野さん。「今は使い捨ての時代というけれど、くぎ1本でも、取っておけば何かの役に立つと思う」と語り、次作への創作意欲をかき立てている。
=2008/04/18付 西日本新聞朝刊=