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【厚労省のカルテ】(2) 医師不足消えぬ現場の悲鳴 (1/3ページ)
「馬1頭あげます」。柳田国男の民俗学研究で知られる岩手県遠野市が、昨年からユニークな医師募集を始めている。市内唯一の公立病院である遠野病院に来てくれる医師に、地元で育った馬1頭(500万円相当)を与えるというのだ。
「それだけ医師不足が深刻ということ」と市の担当者。入院と外来合わせて、一日平均820人の診察をこなす遠野病院だが、常勤医師は9人しかいない。「とりわけ産婦人科、整形外科、循環器科は遠方からの応援医師だけで対応している状態。診療日が週1日しかない科目も多い」
奇抜な募集策への応募はまだない。「むしろ、現場医師から『金やモノではつられない』といった反発も少なからずあった」と担当者は苦笑する。
医師不足への同様の悲鳴は全国から聞こえてくる。とりわけ地方の状況は厳しい。医師用に住宅を用意したり、報酬とは別に研究費を用意するところもある。
一方で、厚労省は「医師不足なのではなく医師偏在だ」という姿勢を長くとってきた。人口減などを見越した医師数の将来推計で、「平成30年代には医師数が過剰になる」といった見通しが根拠になっている。医師増加が医療費の増大になるという理由で、医学部定員を削減した時期もある。
厚労省は研究機関「国立社会保障・人口問題研究所」を持つ。人口や社会保障費の推移は、ここで科学的に分析され、厚労行政の将来像をつくる際の根拠となってきた。