08年度円債運用、イールドカーブの歪みに着目=企業年金連合会
茂木 千香子記者 大林 優香記者
[東京 17日 ロイター] 企業年金連合会の年金運用部債券グループ・ファンドマネージャーの師田光太郎氏は、2008年度の円債運用では「イールドカーブ(利回り曲線)のバランスに収益上のチャンスがある」との見方を示した。
同氏は16日に行ったロイターとのインタビューで、今年度内は政策金利が据え置かれる公算が大きいとの見方を示し、運用手法としては「金利の方向性にかける動きではなく、イールドカーブの歪みや形状変化を見つけて細かくやっていく」との考えを示した。
企業年金連合会の07年3月末時点での年金資産時価残高は13兆1943億円で、内訳は国内債券36.4%、国内株式27.5%、外国債券11.0%、外国株式21.9%。07年度分はまだ公表していない。
<日銀の金融政策、次の一手は利上げ>
今年度の長期金利見通しとして、師田氏は1.1─1.8%のレンジを想定している。1.3%前後が中心になるが、方向性を定める上で「1.6%が1つの分岐点になる」とみる。
日銀の金融政策については、「次の一手は利下げというより、利上げと見た方がいいが、いつになるかは全く不透明」とし、年度内は据え置きになる可能性が高いとの見通しを示した。ただ、利下げの可能性についても「完全に排除することはできず、リスクシナリオには多少入れておく必要がある」と述べた。
今年度の運用については、金利の動きが限定されるなかで国債のボラティリティは低下するとみており、イールドカーブの「細かい歪み」に着目していく。具体的には、3月に超長期債のイールドカーブが傾斜化するなど「イールドカーブが歪んだので動く余地がある」とみている。4月に入り、歪みはやや改善されたが「先物ではまだ行き過ぎた分を修正し切れていない」と指摘した。
短期債についても「2年債に比べ3─4年債が膨らんでいる」(同氏)ため、運用上のチャンスがあるとみる。ただ、投資のタイミングについては慎重な判断が必要と指摘した。
<円債ポートは指数並み>
師田氏と同じ債券グループでファンドマネージャーを務める成田俊介氏によると、クレジット物については「(スプレッドが)一段とワイドニングすれば、押し目を買って行きたい」考え。ただ、足元ではスプレッドが縮小傾向にあり、押し目買いの機会が来る可能性は低いとみている。
現時点の連合会の円債ポートフォリオはベンチマークとするNOMURA─BPI指数とほぼ同じ。昨年9月末以降に、若干オーバーウエートだった国債を減らし、ややアンダーウエートだったクレジット物をスプレッド拡大局面で増やしたため、ともに中立に戻っているという。ただ、スプレッドが最大化したのは3月で、成田氏は「振り返るとタイミングがちょっと早かった」と述べた。
「今後、国債とスプレッド物のどちらに投資妙味があるか」との質問に対し、同氏は「物価連動国債や15年変動利付国債を含めるなら相対的には国債の方が魅力があるかもしれない」と述べた。連合会が物価連動債や変国債に投資しているかどうかについては言及を控えた。
企業年金連合会は転職などで企業の厚生年金基金を脱退した人の年金資産を引き継いで、国内外の株式や債券で運用し、老後にまとめて年金として給付する。国内債については両氏を含む債券グループが自社でアクティブ運用するほか、一部を外部の投資顧問会社に委託している。インフラや人的資源の問題で外債はすべて外部委託しているが、成田氏は「大きなアイデアとして、円債のベンチマークを与えられている場合でも、投資対象を円に限定せず、ヘッジをかけて外債を買ってもいいのではないか」と述べ、将来的に、超過収益を狙う部分について自社で外債に投資することも考えていきたいとの意向を示した。
07年度の債券の自社運用分収益率はNOMURA─BPI指数のプラス3.4%とほぼ同水準で、大幅に相場が下落した内外株式や円高の影響を受けた外債など他の資産クラスを上回った。
(ロイター日本語ニュース 編集 吉瀬邦彦)
*このインタビューは16日に行ったものです。
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