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【社説】

新型インフルエンザ 総合対策で万全を期せ

2008年4月18日

 政府が新型インフルエンザ対策の一環として、備蓄ワクチンの事前接種を決めたのは妥当だ。水際での侵入防止、国内侵入に備えた医療機関の整備などを含め、総合的な対策を構築してもらいたい。

 新型インフルエンザウイルスは鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が突然変異を繰り返して発生する。H5N1型は普通のインフルエンザよりも毒性が強いが、通常は鳥からヒトへの感染にとどまっている。

 H5N1型は東南アジアを中心に既に四百人近くが感染し、半数以上が亡くなっている。そのうえ接触機会の多い家族間とはいえ、ヒト同士の感染が見られるようになった。新型出現の可能性が高まってきたことは確かだ。

 政府の専門家会議が事前接種を決めたのは、これに備えてのもので、対象者は感染症指定医療機関の医師、看護師、検疫所の職員ら感染者と接触する可能性の高い人々で、約六千人の希望者を募り、本年度に臨床試験として行う。

 この結果、有効性や安全性が確認されれば、来年度は一千万人まで事前接種の対象者を拡大する。

 接種されるワクチンはH5N1型をもとに製造・備蓄されているもので、新型対応ではない。このため感染予防効果は限定的だが、重症化を防ぐことは期待できる。

 備蓄ワクチン二千万人分のうち来年度中に半分が有効期限切れになることが背景にあるとはいえ、実際に発生した新型に対応するワクチンを全国民分製造するには着手してから一年半かかる。それでは間に合わない恐れがある以上、次善の策としての選択だろう。

 残された課題は、一千万人の接種対象者の選び方だ。政府の指針では、警察官や電気をはじめとするライフライン関係者、公務員、国会議員などが挙げられているが、優先順位は決まっていない。国民が納得できる優先順位をあらかじめ決めておかねばならない。

 ワクチンには一定の割合で副作用が避けられない。補償のあり方も明確に定めておく必要がある。

 新型出現への対応はワクチン接種だけでは済まない。

 海外から侵入する可能性が高いので、空港や港でも水際対策を徹底的に行うことが求められる。

 さらに国内への侵入に備えて、感染者が運び込まれることが予想される医療機関には、治療薬、機器、防護服やマスクなども十分に用意しておかねばならない。

 こうした万全の総合対策を綿密に練っておくことが必要だ。

 

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