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NIKKEI NET

社説2 ネット被害から子供を守れ(4/18)

 子供たちが学校の情報をインターネットに書き込む「学校裏サイト」の数が、文部科学省の調べで約3万8000件に上ることが判明した。こうした裏サイトがいじめの原因になったり、出会い系サイトによる事件も増えている。健全な情報社会を築くには、子供たちをネット被害から守る仕組みを作る必要がある。

 学校裏サイトには電子掲示板のほかに、口コミサイトや「ブログ」と呼ばれる個人の電子日記サイトなどがある。裏サイトで名指しで中傷され、それを苦に女子学生が自殺を図ったり、交流サイトで知り合った男性から呼び出され、被害にあった事件などが増えている。

 携帯電話業界では総務相の要請を受け、有害サイトを青少年に見えなくするフィルタリング(閲覧制限)の導入が始まった。先週、第三者機関の「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)」が発足、どのサイトなら閲覧できるか自主基準作りを進めようとしている。

 問題はこうした自主規制がどこまで実効性を持つかだ。有害サイトの多くは日本の法律が及ばない海外から発信されている。フィルタリングも、子供が親に頼んで外してしまったり、必要なサイトまで見えなくなってしまうといった課題がある。

 子供を被害から守るには携帯電話などを使わせないのが一番だが、夜間の塾通いに必要だという声も一方にある。だとすれば、パソコンや携帯電話の使い方を親がもっと管理指導し、事業者もフィルタリングの性能を高めていく必要があろう。

 こうした状況から自民党や民主党には新たな法案作成の動きがある。有害サイトの基準を政府が決め、問題があれば事業者や管理者に削除を義務付ける内容だ。連休明けにも議員立法で提出される見通しだ。米国では1996年に通信品位法が成立したが、最高裁で表現の自由を侵害するという違憲判決が出た。

 政府による法的規制は日本でも表現の自由を損なう可能性があり、日本だけ規制を強めれば、デジタル情報産業が海外に逃避してしまうことも予想される。法的規制は最後の手段とし、まずは学校、保護者、事業者が一丸となって、ネット被害防止の実効性を高める必要がある。

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