官邸主導 “守屋色”一掃/防衛省人事刷新
守屋武昌前防衛次官の汚職事件に絡み、防衛省は守屋氏側近の人事刷新に踏み切った。一義的には“守屋色”を一掃し、組織改革を進める狙いだとされる。同時に、地元とのあつれきを生みながら在日米軍再編を強力に進めた守屋氏の手法を受け継ぐ面々を排除し、米軍普天間飛行場の移設問題を円滑に主導したい首相官邸の意向が反映された格好だ。普天間移設で防衛省と対立してきた内閣府からは、「県へのお土産になる」と歓迎する声が上がる一方、課長クラスにまで及ぶメスの入れように、再編への影響を懸念する声も漏れる。(東京支社・島袋晋作)
「普天間は防衛省の人事が終わってからだ」
今月初旬、首相官邸を訪れた政府高官に、二橋正弘官房副長官が意味深げに話し掛けた。
普天間移設で地元との融和路線を敷く二橋氏は、北部振興事業費を「凍結」するなどして受け入れを迫る防衛省側と就任直後から対立していた。業を煮やした二橋氏が、「守屋派」更迭を強く働き掛けたとされる。
官邸は、新テロ対策特別措置法成立後の最重要案件に、膠着する米軍普天間飛行場の移設問題を位置付けている。今回の人事は、「官邸主導」をより明確にし、移設作業を加速するための布石とみられている。
防衛省が人事を内示したのは、対テロ新法を再議決した十一日の衆院本会議終了直後。強い影響力を持つ幹部らの突然の異動情報は瞬く間に広がり、省内は騒然とした。
「一生懸命やってきたつもりだが大変残念だ。このままでは普天間は絶対に動かない」。人事を宣告されたある幹部は無念そうに語った。
「増田カラー」
対象となったのは金澤博範防衛政策局長、門間大吉大臣官房審議官ら、米軍再編などで守屋氏が重用したメンバーだ。
金澤氏は昨年九月に就任したばかりだった。わずか三カ月余での筆頭局長交代は極めて異例。守屋氏の肝いりで新設された米軍再編担当審議官の門間氏も、出身の財務省へ異動となった。在沖米軍基地関係の実務を担当し、何度も沖縄入りした辰己昌良地方協力企画課長も外れ、沖縄関係の顔触れは一新された。
代わって、防衛政策局長には高見澤將林運用企画局長、高見澤氏の後任は徳地秀士北関東防衛局長が内定した。
高見澤、徳地氏は、増田好平事務次官とともに海外留学経験がある「国際派」だ。中でも高見澤氏は増田氏に近く、省内では「『増田カラー』を打ち出した人事」との見方もある。
行政の連続性
「守屋ラインを一掃できるか見ものだ」
ある県幹部は、防衛省の一月人事に早くから注目していた。
県側の期待感を見透かしていたように、内閣府沖縄担当部局の幹部は「次回の普天間移設協議会では、この人事を報告するだけでも大きな意義がある」と歓迎する。
ただ、高見澤氏は昨年八月まで横浜防衛施設局長を務め、「基地行政の難しさはよく分かっている」(防衛省幹部)とされるものの、沖縄関係の実務経験はない。増田次官でさえ「沖縄の基地問題に限らず、基地行政そのものへの関心が薄い」(同)とみられている。
「実施段階」とはいえ、課題山積の米軍再編を担う新しい顔触れに、別の内閣府幹部は「やり過ぎだ。行政の連続性が保てなくなる」と、在沖米軍基地問題が停滞することへの警戒感をにじませた。