中国海南省で胡錦濤国家主席と台湾の蕭万長次期副総統が会談し、経済交流の拡大などに努力することで一致した。会談を受け、台湾の馬英九次期総統は対中国交流の窓口機関、海峡交流基金会の理事長に、中国側と太いパイプを持つ江丙坤・国民党副主席を充てると発表した。矢継ぎ早な中台関係改善の動きである。
久しぶりの最高首脳レベルの対話で、中国側は蕭氏を各国の元首並みに厚遇した。台湾側は中国からの台湾観光の解禁や週末チャーター直行便の実施、経済貿易関係の正常化などを求めたという。
三月の台湾総統選が状況を変えた。馬氏は民主進歩党(民進党)政権の経済失政を攻撃し、対中関係の強化を「経済振興の鍵」と訴えた。中国への進出拡大を狙う企業家や生活の向上を願う中間層の支持を得て勝利した。五月の就任を前にした関係改善策には、新政権の基盤固めの狙いがあろう。
陳水扁氏が総統を務めた民進党政権は対中独立志向で、中台関係は冷え込んだ。二〇〇五年には、中国が武力行使に法的枠組みを与える反国家分裂法を採択している。北朝鮮と並び、東アジアで軍事的衝突の可能性もある地域とされてきた台湾海峡の緊張緩和は、日本など周辺国にとっても喜ばしいことだ。対話の促進、経済を中心とした交流の活発化が望まれる。
中国にしてもチベット問題で国際的な批判を浴びる中、台湾との対話でイメージ回復を図る意図があったはずだ。
双方とも政治的な思惑はあっても、交流促進が互いの利益であることも間違いない。台湾側の窓口となる江氏は、共同通信社との会見で、中台直行便や中国観光客の受け入れについて、早期実施へ政権発足後、早速中国側と正式協議を始めることや、発足前に自らが訪中する考えを示した。中国側からも交流窓口機関トップの人選内定が伝えられている。着実に交流を具体化してもらいたい。
中台双方の間に深い溝が存在していることも事実だ。中国は「一つの中国」政策を崩しておらず、台湾にも対中独立志向の人たちは多い。対中関係改善による経済振興が思い通りに成果を挙げられなければ、新政権への反発が強まるかもしれない。
今回の首脳級会談でも政治的テーマには互いに触れず、専ら経済関係について意見が交わされたという。対立を深めることなく、経済や文化交流による安定的な関係を続ける双方の努力が期待される。
総務省が発表した二〇〇七年十月一日時点の都道府県別推計人口によると、集中する都市圏、減少の地方圏という色分けがくっきりした。歯止めをかけなければ都市と地方の格差は広がるばかりだ。
総人口は、一億二千七百七十七万一千人だった。前年と横ばいだが、都道府県で最多の東京は前年と比べて0・78%増の千二百七十五万八千人となり、総人口に占める割合は二十八年ぶりに10・0%になった。
人口が増加したのは東京、愛知、神奈川、千葉、埼玉など十都県だけだ。岡山、広島、香川など三十七道府県は減少した。東京、名古屋、大阪の三大都市圏の合計人口は六千四百六十一万三千人で、日本の総人口の半数を超え、統計データが残る一九八〇年以降で最高を記録した。大都市への人口集中と地方の衰退ぶりがみてとれよう。
地方が活力を取り戻すための大胆な政策が必要だ。考えられるのは、政府の地方分権改革推進委員会が打ち出した地方が主役の国づくりであろう。昨年十一月の中間報告では、自治行政権、自治財政権、自治立法権を持つ地方政府の確立を目標に、中央政府の役割を限定し、国から地方へ徹底的に権限や財源を移譲するとした。
権限移譲をめぐっては、分権委は道路や農業などの事務を移すよう求めているが、中央省庁側の大半は「ゼロ回答」となっている。全閣僚で構成する地方分権改革推進本部の本部長である福田康夫首相は、直近の会合で「現時点での省庁の対応は国民の目線から見て不十分」として各閣僚に対応を指示したが、分権改革へ指導力を発揮しようとの意気込みは伝わってこない。地域格差解消は、首相が先頭に立たなければ成し遂げられないと肝に銘じてもらいたい。
(2008年4月17日掲載)