米国では、約1,500万人が社会不安障害(SAD)によって通常の社会生活や恋愛生活を送れずにいることが新しい調査で判明した。調査を行った米国不安障害協会(ADAA)によると、SADのために孤立し、肩身の狭い思いをしている患者が多数存在しており、誤診も多いという。患者の36%が、発症から受診するまでに10年以上経過している。
SADは、対人関係や人前に出ることに対して強い持続性の恐怖心を覚える疾患。人から評価や批判を受けたり、恥をかいたりすることへの恐れから、日常のありふれた状況をも避けるようになり、日課や仕事に支障を来すほか、友人関係や恋愛関係を築くのも極めて困難になると同協会のJerilyn Ross氏はいう。
米ハーバード大学(ボストン)医学部精神医学教授Mark H. Pollack博士によると、SADの一般的な発症年齢は12〜13歳で、患者の多くは幼少時から不安感があったと訴えているという。動悸、喉の閉塞感、発汗、赤面、失神、振戦、吃(きつ)音(発音障害)などの身体症状もみられる。
今回の調査では、不安症状のある患者578人、強迫神経症患者276人、SAD患者287人を対象に調査員が問診を行った。その結果、SAD患者の75%が症状のために正常な活動ができないとしており、69%が他人に異常だと思われたくないと回答。また、58%が自分の症状を恥ずかしく思うと答えた。しかし、疾患と診断され治療を受けている場合、生活が改善したという患者が多く、59%が治療によって恋愛関係によい効果が得られたとしている。また、39%が、治療が奏効する可能性があると知ったことが、受診を決心する後押しになったと述べている。
効果の認められている治療法としては、認知行動療法のほか、リラクゼーション法、薬物療法などがある。行動療法と薬物療法の併用も有効で、さまざまな種類の抗うつ薬などが処方される。
今回の調査のそのほかの主な結果は以下のとおり:
- 34%が、自分の症状が原因で大切な人とひどいけんかをすると答えた。
- 77%が、この障害により恋愛関係に悪影響が出ていると答えた。
- 35%が、SADのために親密な関係を避けていると答えた。
- 24%が、SADのために大切な人が自分を尊重してくれないと答えた。
- 55%が、親しい友人がいないと答えた。
- 66%が友人の理解を得られないとしたほか、50%が自分の症状について友人に話していないと答えた。
- 60%以上が、友人への連絡を絶っているか、友人からの電話に出ないと答えた。
原文
[2008年4月9日/HealthDay News]
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