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河北春秋

 あの子は誰だろう。北京五輪の聖火リレーに抗議するチベット難民や支援者が利発そうな坊やの写真を掲げている。テレビのニュース映像にちらりと映った。ロンドンでもサンフランシスコでも▼この坊やはパンチェン・ラマ十一世。ダライ・ラマ法王に次ぐチベット仏教の指導者で、亡くなった先代の生まれかわりとして法王から指名を受けた。直後、中国政府に政治犯の容疑で連行された。わずか6歳

 ▼以来13年たつのに、少年はなお行方不明。支援者らは少年を「世界最年少の政治囚」と呼んで救出を訴えている。一方、中国当局は自ら選んだ別の少年をパンチェン・ラマに擁立している▼こちらは中国の息がかかったいわば操り人形。ダライ・ラマ十四世が亡くなった後に、生まれかわりの「転生者」を探すのは、パンチェン・ラマの仕事になる。中国政府の狙いは明らかだろう

 ▼「ある種の文化的ジェノサイド(虐殺)が起きている」。訪米中のダライ・ラマがチベット独自の文化を認めぬ中国を非難した。パンチェンの不明事件もまた文化破壊、宗教弾圧の一例▼パンチェン・ラマの写真はたった1枚、6歳の時の肖像が残されているだけだ。生きていれば来週、19歳の誕生日を迎える。少年を返せ―。チベットの人々の悲憤は察するにあまりある。

2008年04月17日木曜日


 


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