悲観論の修正続き、日本株に欧州勢から資金
[東京 17日 ロイター] 17日の東京市場は株高・債券安、ドル/円やクロス円も堅調に推移している。JPモルガン・チェース(JPM.N: 株価, 企業情報, レポート)など米企業決算を前向きに評価するセンチメントになっており、株式市場には欧州勢や国内の機関投資家から買いが入っている、という。
企業業績不安を過剰に織り込んだ部分が修正される過程が続く可能性がある、との声も出ている。この後に続くメリルリンチ(MER.N: 株価, 企業情報, レポート)やシティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)の決算をこなしながらリスクマネーがどこまで出てくるのかがポイントだ。一方、円債市場では長期金利が1.4%に近づくと着実に買いが入ることから、短期的な金利上昇余地は限定とみられている。
<不安心理は底打ちか>
株式市場では日経平均が続伸、前日比300円を超す上昇となっている。米国株が大幅高となった流れを受けて、金融株や不動産株など信用収縮懸念で売り込まれていた業種を中心に買いが入った。
「欧州勢に加えて、国内長期運用資金の買いも入り、戻り売りをこなしている」(準大手証券エクイティ部)との声が出ている。
JPモルガンの決算ばかりでなく、悪いニュースに対して市場は「悪材料織り込み済み」と反応するなどセンチメントが好転してきている。三菱UFJ投信運用企画部ストラテジストの石金淳氏は「3月半ばのベアー・スターンズ(BSC.N: 株価, 企業情報, レポート)破たん危機に対する救済策が打ち出されたことを機に、信用収縮など金融不安に対する市場の不安感は底を打った。ベアー・スターンズを救済したJPモルガンは歴史的にみてNY連銀とのかかわりが深かったこともあり、同社の決算に対する反応も好意的だった」とみている。
<株安の修正局面>
UBS証券チーフストラテジストの平川昇二氏は「すでに信用面でのリスクは後退した。リスクプレミアムを横ばいとすれば、日本株は今期20%減益を織り込んだことになるが、現実的なレベルではない。企業業績が方向性として悪いのは事実だが、少なくとも過剰に織り込んだ部分は修正されなければならない」と指摘している。
景気の谷に対して株価の底は半年程度先行するとの経験則もある。年後半の米景気回復を織り込むなら、株価の底入れは正当化されるとみることもできる。平川氏は「米国では昨年9月以降の利下げの累積効果がこれから本格的に出てくる。5月以降は財政政策の効果も出る。日米の株式市場は売られ過ぎの修正とともに米政策効果を織り込む局面に入り、当面、反騰相場が継続する」と話している。
ユナイテッド投信投資顧問シニアファンドマネージャーの高塚孝一氏は「ファンダメンタルズ面で何か変わったというわけではないが、リスクマネーを出せる人たちはチャンスと思っているようだ。金融や小売りなど内需系セクターが買われ、金融相場色を強くしている。こうした業績相場から金融相場へのフェーズの転換は相場反転時には重要なポイントだ」という。
<ストップロス巻き込み債先50銭超の下落>
日経平均株価が騰勢を強めたことで円債市場は続落。流動性の高い国債先物には一部海外勢から処分売りが出て、中心限月は138円84銭まで下落、3月6日以来の水準まで売られた。「日経平均株価が段階的に上昇する過程でストップロスをつけた」(外資系証券)という。
国内勢や海外勢の一角からは中期債売りも持ち込まれた。5年70回債流通利回りが2月28日以来ほぼ1カ月半ぶりに0.905%まで上昇。2年267回債流通利回りは、一時1月10日以来ほぼ3カ月ぶりの0.645%をつけた。外資系金融機関の債券ディーラーは「バンクの売りに加え、為替相場で円高が一服したとみた海外参加者が、中期債を売ることで利益を確定していたようだ」と話した。
英国銀行協会(BBA)が16日、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の算出方法の見直しを前倒ししたことを明らかにしたことも、手掛かり材料視されたフシがある。ある参加者は「手前の金利上昇要因につながりかねないとの連想が働き、中短期債利回りがそれにつられた可能性がある」とみている。「日銀利下げ観測の後退に伴い、ただでさえ荷もたれ感の強いゾーン」(外資系証券のストラテジスト)との見方もあった。
<10年債1.4%は買いか>
それでも長期金利の上昇ピッチが鈍いのは、主要な投資家はまだ買えていないとの思惑からだという。「長期金利が1.4%に近づき、5年債利回りが0.9%に上昇する場面で、この水準をターゲットにしていた投資家が押し目買いを入れた」と、外資系証券のストラテジストは指摘する。
17日のメリルリンチや18日のシティグループの決算を控え、主要投資家は積極的な取引を手控えている。「週が明ければまた金利低下方向にブレかねない」(外資系金融機関)との見方が出ている。
(ロイター日本語ニュース 橋本 浩記者 編集:佐々木美和)
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