量から質へ−。日本のアニメーションを世界にアピールする「東京国際アニメフェア2008」が先月30日まで、東京都江東区の「東京ビッグサイト」で開かれた。12万人を超す史上最高の来場者でにぎわったが、その裏側では、大勢に見てもらえる質の高いアニメを作り出そうとする取り組みが活発化していた。(谷口隆一)
・
■写真で見る■「東京国際アニメフェア2008」ガイナックスのブース
ブース外に伸びた行列が買い求めているのは「天元突破グレンラガン」のキャラクターグッズ。テレビ東京系で昨年9月まで半年間放送されたSFアニメで、放送終了から半年がたっても人気に衰えが見えない。「企画を練り上げて送り出した成果」と、「グレンラガン」を制作したガイナックス(東京都小金井市)の武田康廣取締役統括本部長。
設定やストーリーといった内容と、映像の質にこだわったことが、廃れない人気につながっている。フェアでは9月6日の劇場版公開を発表。期待の高さを表すようにブースを大群衆が埋め尽くした。
アニメといえば、以前は玩具メーカーなどが商品を宣伝するためにスポンサーとなって作られていた。90年代半ばからは、DVDのようなパッケージを売って収益を確保する作品が増えた。3カ月から半年、深夜などにテレビ放送して作品を見せたうえでDVDを発売する。
当初はうまくいっていたが、毎夜3作品、4作品と新作アニメが放送される状況が到来。高画質で録画可能なデジタル機器の登場が重なり、よほどの作品でなければパッケージを買ってもらえなくなっている。
果てに見えるのは日本アニメの“崩壊”だ。「地上波で良いアニメが減れば、それを流しているアニメ専門チャンネルも致命的な打撃を受ける」。CS向けアニメ専門チャンネル「ANIMAX」を展開しているアニマックスブロードキャスト・ジャパン(東京都港区)の滝山雅夫社長もそんな危惧(きぐ)を口にする。
解決のために打ち出したのが自前の作品の確保。親会社のソニー・ピクチャーズが06年に作った実写映画「ウルトラヴァイオレット」をアニメ化して、7月に「ANIMAX」で放送する。
監督は「あしたのジョー」「宝島」の出崎統氏。制作は米アカデミー賞の候補になった「東京ゴッドファーザーズ」をはじめ、高品質のアニメ作りで海外にも知られるマッドハウス(東京都杉並区)。「日本だけでなく欧米でDVDを売る」(滝山社長)ことで、収益機会を増やせる。続く企画も準備中だ。
今月7日からテレビ東京系で始まった「ソウルイーター」は、午後6時に放送された後、数日のうちに深夜に再放送する“共鳴放送”がウリだ。「深夜ならではの企画も加えて放送する」と制作するボンズ(東京都杉並区)の南雅彦社長。「放送する機会を増やせば、より多くの人に知ってもらえる。夕方に見られないハイターゲット層にも届く」と狙いを語る。
週に100本近いアニメが放送されている日本では、とにかく見てもらうことが最初に必要。大久保篤氏が描くマンガ原作の力も相当に強い「ソウルイーター」だが、ファンをつかみ、大きなビジネスへと育てるためには、前例のないことにも挑戦を辞さない。
ボンズでは03年から手がけたテレビシリーズ「鋼の錬金術師」が人気となり、DVDも100万枚を超えてヒットした。「『鋼』のマンガ原作を出しているスクウェア・エニックスと、次にやりたいと話していたのが『ソウルイーター』。特徴的な絵を持つマンガのひとコマひとコマをどう見せるのかを楽しみながら、映像化に取り組んでいる」。常に高い評価を集めてきた高品質の作画力も合わせて勝負をかける。
◇
今回が7回目となった「東京国際アニメフェア」には、前年の10万7713人を大きく上回る12万6622人が来場した。一般向けの新作のPRと同時に、日本のアニメを世界に売り込む商談会としての機能も担っていたが、今回は海外からのビジネス来場者が1055人と、初めて1000人を超え、狙いは達成されてきている。09年は3月18〜21日、東京ビッグサイトで開催予定。
【関連記事】
・
“日本一”アニソンイベントが8月に!さいたまスーパーアリーナ
・
アニメ曲の歌手が一堂に ドワンゴと文化放送 8月、埼玉でライブ
・
人気声優の小清水亜美が「笑っていいとも!」出演 タモリに感激
・
世界初!“隠れ腐女子”応援サイト誕生
・
「アニヲタ宣言」特集