ワシントン――薬物注射による死刑執行は耐え難い苦痛を伴う可能性があり憲法違反だと死刑囚が訴えていた裁判で、米連邦最高裁は16日、原告の請求を棄却する判決を7対2の多数決で言い渡した。
訴えていたのは米ケンタッキー州のラルフ・ベイズ(52)、クライド・ボウリング両死刑囚。同州が採用している3種類の薬物を投与する死刑執行手順は、場合によっては死刑囚が耐え難い苦痛を感じると主張。「残酷で異常な処罰」を禁じた米国憲法に違反するとして、3年前に提訴した。
州側は、薬物注射は他州と同様の手順を採用しており、死刑執行前に医療行為が必要な場合に備えて医師も同席しているなどと反論していた。
判決の多数意見でジョン・ロバーツ最高裁長官は「(ケンタッキー州は)可能な限り最も人道的と考えられる死刑執行手段を採用している。目的通りに執行されれば苦痛なく死に至る」と認定。同州の手順が「残酷で異常な処罰」にあたることを証明できなかったとして、原告の訴えを退けた。
米国では35州が薬物注射による死刑執行を採用しており、最高裁が上告受け入れを決めた昨年9月以降、各州で死刑執行が保留となっていた。今回の判決を受け、バージニア、オクラホマ、ミシシッピなどの各州が死刑再開を表明している。