2008年4月14日

本拠地でのオフです。
髪を切りに行ってすっきりしたあとは、
寛の空手の稽古を見に行きました。
言葉遣いはきれいですが、態度がそれに伴わず、
落ち着きがなくてちょろちょろしている４歳児。
なんとか集中力と礼節を学んでほしい、ということで、
初お稽古事を最近開始したのです。

白人黒人入り混じった先生たちがずらりと揃う道場は、
日本人にとってはかなり見ごたえのある光景です。
返事がすべて「Yes, Ma'am 」「Yes, Sir」なのもなんだかかっこいい。
その中にうちの子供がいる・・・のに、一瞬だけ感動した僕でした。
（大きくなったなー）

しかし、稽古開始と同時に、がっかり度がアップ。
誰よりもおちゃらけていて、誰よりも動きが妙で、
何か必ず笑いを取らないといられないのです。
場が真剣になればなるほど、彼はその緊張に耐えられず、
わざと転んだり、踊ったりするのです。
なぜ、こんな子供になってしまったのか。
俺か？俺に似たのか？

学業のお稽古事は、おそらく向かないので最初から捨てています。
野球をやらせたい僕の父は、「空手か・・・」と苦笑いです。
しかし野球も勉強も、まずは当たり前の礼儀があって、が、我が家の方針。
強くならんでいいから、５分、せめて３分じっとしとかんかい！
挨拶するとき小首をかしげるな！
ああっ！その脚の開き、何で内股やねん。もっとがばっと！

今日あらためて、
まわりの子供が寛よりはるかに素晴らしく見えました・・・。

ペンシルベニア州フィラデルフィアにて　田口壮　

2008年4月13日

デーゲームの朝食は、球場でいただきます。
シェフがいて、注文に応じて作ってくれるオムレツは、ここでは
「ホワイト」（卵白）が主流。コレステロールを過剰に摂取しないように、
特別に黄色いオムレツを注文しない限りは、自動的に出てきます。
パンは白パンではなく、ライ麦など。
「試合前・試合後には、こんな栄養を摂りましょう」
などとインストラクションも壁に貼られており、遠征にもその
貼紙は、もれなく着いてきます。
若い選手が多いチームだと、食事もまずカロリーありきになりがちですが、
こういったところの選手管理が徹底しているのは、たいしたものです。

今日は「打てばヒーロー」のチャンスで打席が回ってきたのに、
結果を出せず、ヒーローどころか戦犯のような状態になってしまいました。

食事ばっかり健康的で、今夜は気持ちが不健康。
身体はすごく元気なのに、心がしおれてしんどい夜です。

ペンシルベニア州フィラデルフィアにて　田口壮　

2008年4月12日

クラブハウスや食堂で、ひんぱんにＧＭ（ジェネラル・マネージャーのパット・ギリック）と会います。
カージナルスの頃は、そういった「上の人」が「下界に降りてくる」ことはあまりなかったのですが、
なぜだかこのチームは、フロントだろうが誰だろうが、いつもわいわいと一緒にいるのです。
パットは僕を見かけると必ず、
「おー、ソウ、ちょっとこっち来て座れよ！」と、
食堂の片隅で、茶飲み友達となってくれます。
今日も試合前に、野球のこと、家族のことなどをゆっくり話しました。

「ところで、お前はリッジ（ブラッド・リッジ。抑え投手）の後ろで守るのが嫌いなのか？」
そんな質問もストレートに飛び出します。
僕の初エラーも、エラーに限りなく近いプレーがあったのも、全部ブラッドが投げたときだったので、
そんなふうに聞いて来たのでしょう。
「違いますよ！対戦するのは嫌いだけど、守るのは好きです」

なんということのない会話ですが、僕にとってはありがたいこと。
新しい環境で、なかなか自分自身波に乗れず、思うようなプレーが見せられない中で、
「何を考えているのか理解しよう」としてくれる相手がいるということ。しかもしれが
ＧＭだということ。場合によっては、なんとなく距離を置かれたり、無視されたり、ということが
起きてもおかしくない状況です。だから、「なんとか気楽な状態でプレーさせてやろう」という
ＧＭの心遣いが、痛いほど伝わってくるのです。

「リッジの後ろで守るのが嫌いなのか？」
会話がなければ、そういうやつだ、と思われていたかもしれません。
まして僕は「ガイジン」ですから、理解しようとする前に、放って置かれて終わりでしょう。
言い訳なんて、させてもらえないのが普通です。

パットが常に選手の食堂でコーヒーを飲んでいる理由が、わかってきた気がしました。
同じレベルに降りてきて、一選手の苦しい気持ちを和らげようとしてくれる「上司」の目配り、気配りに、
いつか必ず応えたいと強く思った平社員の僕でした。

ペンシルベニア州フィラデルフィアにて　田口壮　

田口選手宛のファンレターはこちらまで　letter@taguchiso.com