東北5県に住む中国残留孤児85人が早期帰国や帰国後の生活に対する支援が不十分だったなどとして、国を相手取り1人当たり3300万円の損害賠償を求め仙台地裁に起こした中国残留孤児東北訴訟で、原告・弁護団は27日、訴えを取り下げた。昨年11月の改正中国残留邦人支援法の成立を受けたもので、東北訴訟は終結した。原告らは会見し、「これで、私たちは日本人に戻りました」と笑顔も見せた。
東北訴訟は05年5月~06年12月、5回にわたり62~77歳の男女計85人が提訴。県別では、▽青森12人▽岩手16人▽秋田7人▽宮城37人▽福島10人、元東北在住者3人。残留孤児訴訟は全国15地裁に起こされた。判決前だったのはこのうち11地裁で、仙台地裁での取り下げで地裁段階ではすべて終結した。
この日は、仙台市青葉区の仙台弁護士会館で記者会見と原告集会が行われ、山田忠行弁護団長は「残留孤児が求めてきた老後生活の保障を大きく前進させた」と評価した。
続いて、各県の原告代表があいさつ。福島県の浅野ナヲさん(68)は「裁判が成功し、成果を得られたことに感謝します」。秋田県の佐々木余さん(68)は「原告のほとんどは70歳を超え、これ以上戦う力はない。訴訟が終結してよかった」と改正支援法成立を喜んだ。一方で、支援給付金制度に収入認定の仕組みが残されたことや、孤児の死後に一部の配偶者が支援金を受給できないなど課題も指摘されており、「心から『日本に戻って良かった』と思えるまで頑張りたい」と話す人もいた。
改正支援法により、孤児らには4月1日から、老齢基礎年金の満額6万6000円と、月最高8万円の支援給付金が支給される。【伊藤絵理子】
毎日新聞 2008年3月29日 地方版