特集/コラム

【ティーンズラボ】2004-08-13

「なんとなく」「ノリで」「焦りから」…
Hを急ぐ10代女子の深層心理

「なんとなく」「ノリで」「焦りから」…
Hを急ぐ10代女子の深層心理

先頃NHK出版より発行された「少女たちはなぜHを急ぐのか」の著者、高崎真規子さんは「セックスの価値観が変化し、現代の女子高生にとってHの意味合いが軽くなってきた」と話す。そこには20歳を前にした「焦り」や「自信のなさ」など、複雑な深層心理が垣間見える。

■10代女子の性交経験率は高3で45.6%

東京都幼小中高心障性教育研究会が2002年に実施した「児童生徒の性意識・性行動調査」の結果を見てみよう。性交経験率は、中1女子で1.3%、中2女子4.2%、中3女子9.1%、高1女子25.5%、高2女子40.9%、高3女子は45.6%という結果になっている。ちなみに、高1男子は24.8%、高2男子33.2%、高3男子37.3%と、高校生ではどの年代でも女子の経験率が高い。高3の男女の推移を見てみると、1993年の調査では男子27.3%、女子22.3%と男子のほうが上回っていたが、1996年の調査で男子28.6%、女子34.0%と女子が男子を上回る結果となった。また、1999年の調査では男子は38.7%だったため2002年は1.4%の減少だったが、女子は39.0%から2002年は6.6%増加となっている。

次に、高校生の性交に関する意識や見解について見てみると、「性交をすることをどう思うか」という問いに対して、1996年の調査では「結婚するまでは性交はしない」が男子4.9%、女子7.3%だったが、2002年の調査では男子3.6%、女子4.2%に減少した。一方、「性交については考えたことがない」は、96年調査では男子11.6%、女子15.5%だったのに対し、2002年調査では男子10.9%、女子9.2%に減少しており、現在の高校生は90%が性交について考えており、男女共80%が何らかの条件付きながら、性交には許容的であることがわかった。

■「ヤラはた」は嫌、「女子高生のうちに…」とHを急ぐ10代女子

今年7月、NHK出版より発行された「少女たちはなぜHを急ぐのか」の著者、高崎真規子さんに、取材を通して直接女子高生から聞いたという彼女達のセックス事情について話を聞いた。「女子高生の50%弱がHを経験しているという調査結果を知っても、それほど驚くべき数字ではないと思った」と高崎さん。今や、女の子は小学生の時から化粧をしたり、好きな洋服のブランドがあったり、何もかもが低年齢化しつつある中で、セックスだけが旧態依然としている訳がない、というのが高崎さんの見解だ。H経験率上昇の背景については「一般論としては、昔に比べて女子高生に出会いの場が増えたことが要因だと言われている」と続ける。出会い系サイトや友達からの紹介、ナンパなどの街での出会いが増えたことが、よりH経験の低年齢化を促進しているというのだ。さらに「携帯電話やメールのお蔭で、親に知られることなくラクに相手とコンタクトが取れるということも挙げられる。現代の親の態度も影響が大きいだろう」と高崎さんは付け加える。10代女子がHをする場所というのは、「男子の家で」が最も多いパターンだそうだ。高校生同士の場合、ラブホテルに行くようなお金は持っていない。また、現在は働いている母親が多く、自宅に親がいない場合も多い。さらに、自宅に個人専用の部屋がある10代も多いため、男子の家で二人っきりになれるというわけだ。また、子供に対して理解のある態度を示そうとする親も増えてきており、友達の家に泊まるなどということも、例え相手が異性であっても比較的簡単に許される環境にあるらしい。

また、高崎さんは「昔と比べてセックスの価値観が変化し、現代の女子高生にとっては意味合いが軽くなってきているようだ」と分析する。たとえば、昔なら「一人の人を守り通す」とか「セックスは究極の愛の結晶」といったような「意味付け」が、親や本、映画、歌など様々なものから自然と女性の意識に植え付けられたものだ。「あなたに女の子の一番大切なものをあげるわ」という歌詞にあるように、初Hは「大切なもの」としての重みや価値があった。しかし、現在は性に関する様々な情報が世に溢れており、そんな中で育った今の女子高生にとってセックスはあまり特別なことではなくなってしまったのではないか。高崎さんは「取材で会った女の子たちの中には『貞操観念』という言葉を知っている子は一人もいなかった」と言う。「セックスをする」という行為を10代女子が「ヤる」と表現することからも、Hに対する価値観の変化が感じられる。

もちろん、すべての10代女子がセックスを軽く考えているという訳ではない。中には、本当に好きな子と何年か付き合った後にセックスをした、という10代ももちろんいる。しかし、高崎さんは「Hを経験済みの女の子にきっかけを聞くと、『なんとなく』『ノリで』『周りがヤッてたから焦った』という答えが多いのは事実」と語る。10代女子の中には「ヤラはた」は嫌だという焦りがあるというのだ。「ヤラはた」とは、「ヤラずに二十歳を迎えること」を言うのだそうで、彼女達には「10代のうちに済まさないとマズイ」という意識があるらしい。そのため、大して好きでもない相手や、友達を相手に初Hをしてしまう10代女子も少なくないそうだ。高崎さん曰く、「出会い系サイトで知り合って、1回目は普通にデートして、2回目はHして、3回目で別れたなどという急展開は彼女達にとってザラにある」とのこと。高崎さんは、「女子高生はある意味『大人になったら終わり』という思い込みもあり、H経験にしろ何にしろ、今を急いでいるのではないか」と分析する。彼女達は、大人になったら社会人としてちゃんと働かなければいけないと、意外にも頭の中で大人社会をしっかり描いている。また、歳をとっても結婚していないのは寂しいからと、若いうちに結婚しなければとも思っている。すべてマイナス要因から考え、「こうならないために今はこうしなきゃ」という焦りが、10代女子の意識の中にあるというのだ。

そんな彼女達も、決してセックスを謳歌しているわけではなく、数多くHをしている子の中にもセックスがキライという子もいると言う。「彼氏と彼女という関係になったらセックスは当然するものだ、という意識があるため、自分がしたくなくても相手に求められると義務感で応じている女の子が意外にも多い」とのこと。そうした行動の背景には、女子高生である彼女達の「自信のなさ」が影響しているのではないかと高崎さんは分析する。「歌やダンスなど、何か夢を持っている子はそれなりの自信を持っているようだが、何も夢を描けない子が多い中、自分の魅力が見出せないと、『若さ』や『女性』であることが自分の価値だと思ってしまうようだ」と高崎さん。歳をとることを恐れ、女子高生のうちが「華(はな)」だと言い切る彼女達は、自分のセールスポイントを見つけられないでいる。それでも、男子に言い寄られたい、チヤホヤされたいと思う時、自分の商品価値は「若さ」と「女性」であることに辿り着くため、極論すれば、セックスを利用しているとも言える。「また、現代の10代は特にいさかいを極力避けようとする傾向にある。彼に求められて、それを拒否することによって気まずくなったり喧嘩をしたりするくらいなら、応じてしまおうという気持ちがあるのでは」と高崎さんは付け加える。大して好きでもない男の子と付き合ってしまったり、Hまでしてしまうというのは、10代女子にとってセックスの価値が軽くなっていることもあるが、もう一方には彼女達に断れない「弱さ」があるということなのだろうか。

「少女たちはなぜHを急ぐのか」(NHK出版)
「少女たちはなぜHを急ぐのか」

■急増中の「リサイクル・セックス」に潜む10代の心理

3年前から恋愛カウンセラーとして約1万2000件の相談を受けてきたという、ハート・ジャンクション主宰の安藤房子さんに、10代女子の性の悩みについて話を聞いた。安藤さんは「好きな人には視線も合わせられない、というような奥手な子がいる反面、セックスに対してとても積極的な子も増えてきており、10代女子の性行動は二極化している」と話す。安藤さんは「恋マガジン」というメルマガを4年前から発行しており、ネットや電話による恋愛相談やメルマガの読者は20代が中心だが、ドコモの公式コンテンツで恋愛相談を始めてからは、10代からの相談が大きく増えてきたという。セックスに積極的な10代の中には「好きでもない人と、それも何人ともセックスをしてしまう私は、このままでいいのでしょうか」といった相談内容も少数ではないそうだ。そして、10代に限らず20代や30代にもここ数年多く見られるのが、「元彼や男友達とのセックス」をしているという女性達。安藤さんはこれを「リサイクル・セックス」と呼んでいる。20代や30代でリサイクル・セックスをしている女性達は、過去の恋愛のトラウマから『新しい恋をするのが面倒くさい』という意識を持っている人が多い。しかし、「10代の場合はセックスをあまり大切なこととは捉えていない場合が多く、気楽にしてしまう傾向が強い」と安藤さんは言う。

10代でリサイクル・セックスに走る要因については、安藤さんは「彼女達にとってセックスは寂しさを埋めるためのものであり、見知らぬ人よりは自分を多少わかってくれる相手とのほうが安心だという程度で相手を選んでいるのでは」と分析する。今の10代は、友達をつくることに熱心だったり、1日に何回もメールを交換する友達がいたりする反面、直接顔を合わせて本音を話すことが少ない。そういう彼女達の友達関係が現在は希薄になってきている、と安藤さん。「人に面と向かって接した時に相手の気持ちを推し量ったり、自分の気持ちを伝えたりという『生のコミュニケーション』が苦手な10代は、コミュニケーション下手によって寂しさを抱く。それゆえに濃厚なコミュニケーションを求めて、間を飛び越してセックスに行き着いてしまうのではないか」と安藤さんは見ている。危険なのは、リサイクル・セックスを経験した10代にとって、好きでもない相手とのセックスに対する垣根が低くなることだ。次は出会い系サイトで知り合った人ともヤッてみよう、となりがちな10代を安藤さんは危惧している。

安藤さんによる造語である「リサイクル・セックス」をタイトルとする恋愛ルポルタージュ本は、8月20日にWAVE出版から発売される。(14日からプレゼント付きネット先行予約キャンペーンが開始予定)

「リサイクル・セックス」(ハート・ジャンクション)

10代女子は、Hに積極的な子とそうでない子に二極化されているが、最近増えているのは明らかにHに対して積極的な子だ。自分の体やセックスを大切なものと考えられないことから、元彼や友達、あるいは出会い系サイトで知り合ったばかりの人とまで気軽に経験してしまう。セックスという行為は相手の男性から体を求められるため、例え体だけでも「自分が必要とされている」ことに心が満たされるのかもしれない。Hに積極的で、女子高生である今を謳歌しているように見える子も、その深層心理には意外にも寂しさや自信のなさ、焦りが垣間見えてくる。

「リサイクル・セックス」

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