◆ロッテ2−1楽天(16日・千葉マリン) カーテンコールに応える角中のしぐさがぎこちない。初回1死。簡単に2球で追い込まれた後の真ん中低めのチェンジアップに、バットを最短距離でぶつけた。
「正直入ると思わなかった。いやもう本当にうれしいというしかないっすね」
低い弾道で右翼席まで届く先制1号ソロは、プロ入り2年目の初アーチ。そして、四国(現四国・九州)アイランドリーグ出身者として記念すべき第1号となった。「四国リーグがなかったら、プロに入ってない。活躍して恩返しをしたいと思っていた」朴訥(ぼくとつ)な口調が、このときばかりは強く滑らかになった。
日本航空二高卒業後の06年に、同リーグの高知に入団した。月給はわずか12万円前後。家賃と食費でそのほとんどが消えた。ロッテ球団関係者が「バットを振っているか、漫画を読んでいるか」と評するほど、年俸550万円の20歳は外で遊ぶことを知らない。昨季は同リーグ出身者として初安打と初打点を記録。「精神的に成長した。少しでも大人の仲間入りができたかな」若きパイオニアとして、また一つ歴史を作った。
角中の一撃と、同じ石川県出身の大松が適時二塁打で挙げた2点を、清水が完投で守り切り、チームは今季初の4連勝で貯金1。ソフトバンクと同率で3位に浮上した。「角中はずっといい振りをしていた。四国リーグ出身者の初本塁打が、ウチのチームから出たことに幸福感を感じる」とバレンタイン監督も手放しで褒めた。
試合後には、右翼席に大松と乗り込み、ファンと喜びを分かち合った。サブローら主力の故障で巡ってきたチャンスを生かした雑草男。3年ぶりV奪回を目指すチームに、また頼もしい戦力が加わった。
◆角中 勝也(かくなか・かつや)1987年5月25日、石川・七尾市生まれ。20歳。日本航空二高から四国アイランドリーグ高知を経て、2006年大学・社会人ドラフト7巡目でロッテ入団。1年目の昨季はイースタン・リーグ2位となる打率3割3分5厘をマーク。1軍では7月24日に昇格即先発出場を果たすなど9試合に出場した。180センチ、80キロ。右投左打。年俸550万円(推定)。独身。
◇四国アイランドリーグ出身のプロ選手 05年の育成ドラフトで指名され、06年5月に支配下選手登録、1軍デビューしたソフトバンク・西山道隆のほかに支配下登録されているのは巨人・深沢和帆、ヤクルト・伊藤秀範の3投手、野手では角中以外に広島・中谷翼内野手、ヤクルト・三輪正義内野手の計6人。深沢、三輪以外の4選手は1軍の公式戦に出場している。育成選手は現時点でロッテなど3球団に計5人いる。
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