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【社説】

Jパワー株 スキのない説明が要る

2008年4月17日

 政府が英投資ファンドによる電源開発(Jパワー)株買い増しに中止を勧告した。民営化の際に海外にも積極的に株式売却を促したのは政府自らではなかったか。投資家への丁寧な説明を怠れない。

 Jパワーの持ち株比率9・9%を20%に引き上げたい。筆頭株主、英ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンドからの申請に、政府は外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいて中止を勧告した。

 短期利益を求めがちな外資系ファンドが、巨費を要する原子力発電などからの撤退を求めるようなことがあれば、日本のエネルギー戦略を揺るがす。長期戦略や公の秩序維持の観点から「外資規制は妥当」とする関税・外国為替審議会の意見書に沿った結論だ。

 Jパワーは政府と電力九社が出資して一九五二年に設立された。二千四百キロメートルの送電線の全国ネットワークを持ち、水力や火力発電所から九社に電力を卸している。ウラン・プルトニウムの混合酸化物燃料だけで動かす世界初の原発も近く青森県・大間で着工する。

 電気事業は安全保障などの観点から、欧米でも外資の経営支配を排除している。フランスは政府が株式の七割を保有し、外資の経営支配は不可能になっている。電気以外でも、米国が中国国営企業による大手石油会社の買収提案を、エネルギー法に阻止条項を新たに盛り込んで断念させている。

 電力の安定供給が経済活動や国民生活の維持に欠かせぬ条件であることを考慮すれば外為法による政府の中止勧告もやむを得ない。

 しかし、Jパワー民営化への足跡をたどると首をかしげざるを得ない。二〇〇四年に民営化されたJパワーはもともと経済産業省所管の特殊法人。政府保有の八割の株式に加えて九電力保有の二割も放出させ、海外での大量売却を認めたのは当の経産省だ。株価対策を優先した結果、外資に四割の株式を握られた。買収防衛は念頭になかったようで、安全保障を認識していたのか疑わしい。

 Jパワーは海外での発電事業を経営の柱に据えている。六カ国で出資しながら国内では株買い増しを拒むというのでは、外資系ファンドなどにはあいまいに映るだろう。

 政府はその理由や投資基準を丁寧に説明し外国人投資家の信頼をつなぎとめねばならない。そうしなければ外資導入で日本の経済成長を呼び込む一〇年目標の対日投資残高の倍増が危うくなる。

 

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