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【主張】Jパワー株 中止勧告は妥当な判断だ
英国系投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)によるJパワー(電源開発)の株買い増し計画をめぐって、関税・外国為替等審議会が反対意見を答申したのを受けて、政府は買い増し中止の勧告を行った。
中止理由は、TCIが9・9%から20%に電源開発株を買い増す計画が、「公の秩序の維持を妨げるおそれがある」との判断による。電力の安定供給のためには長期的な計画に基づく投資が必要だ。TCIが経営に参画し、短期的な収益にこだわって経営の安定を阻害するとの懸念が消えない以上、今回の政府の結論は妥当な判断であろう。
国の安全保障や公の秩序維持などを担う業種に対して、外資参入を規制するという考え方は、経済協力開発機構(OECD)で国際ルールとして認められている。
日本の外為法では、「国の安全」「公の秩序」「公衆の安全」の3つの観点から、上場企業の場合は10%以上、非上場企業の場合は1株以上の取得を目指す外国人投資家に投資額やその目的を政府に申請するよう要求している。
その上で、国の安全などを損なう懸念がある場合には取得を禁止できる。
航空法や放送法などでも外資比率を3分の1未満とする規制がある。欧米なども基幹インフラへの外資規制を強化し始めたことから、日本も昨年、外為法の規制対象となる業種を増やした。今回の勧告はそうした流れを踏まえての判断である。
しかし、今回の勧告に対し、TCIは「外資規制が国の対外開放の方針に反する」と批判する。
これに政府はどう答えるか。今回とまったく違うケースだが、昨年9月にアラブ首長国連邦のアブダビの投資会社がコスモ石油の株式の20%を取得した。日本のエネルギー安全保障にとってその投資は有益と判断された。
これに対し、今回のTCIのケースは初めて国民の生活に関する公益企業投資への具体的な規制の判断が示されたといえる。
外資受け入れは日本経済の活性化にとって不可欠である。日本国内ではすでに、多くの業種に外資が参入し、実体経済の担い手になっている。外資規制の基準が明確ではないとの批判もあるだけに、政府は十分な説明責任を果たさねばならない。