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NIKKEI NET

社説2 中国経済なお過熱の懸念(4/17)

 高成長を続けてきた中国経済がやや減速した。ただ景気の過熱感はなお強く、経済運営は難しくなっている。中国政府は過熱の要因である人為的な低コスト政策を改め、市場原理に沿った改革を進めるべきだ。

 中国国家統計局の16日の発表では、1―3月の国内総生産(GDP)の前年同期比実質成長率は10.6%と、2007年の11.9%成長に比べ1.3ポイント低下した。統計局幹部は「主要指標の速すぎる勢いを初歩的に制御できた」と評価した。

 実態は過熱傾向が続いている。1月から2月にかけ大規模な雪害があったのに1―3月の固定資産投資は24.6%増えた。3月の消費者物価上昇率は8.3%で1年前より5ポイントも高い。

 今回の発表に先立って統計局は、06年と07年の成長率を0.5ポイントずつ上方修正した。比較のもとになる数字が高くなったことで減速が印象づけられた面もある。

 中国人民銀行(中央銀行)は同日、金融機関の預金準備率を0.5%引き上げると発表し、インフレ抑制を目指す強い姿勢を示した。政府は食糧価格の統制など市場原理に逆行する政策も実施している。

 国民生活を守るためやむを得ない部分はあるが、やみくもな投資の構造的要因となってきた低コスト政策にメスを入れる必要もある。

 一つは人民元改革だ。元のドルに対する上昇率は加速しているがユーロなども考慮すると十分ではない。インフレ対策としても有効なので一層の改革が望ましい。

 環境対策に十分なコストをかけずに済むことが企業の収益期待を高め、過剰投資を生んできた。汚染による国土の荒廃は深刻で、環境省の設立を機に資金と人員を重点的に配分し、規制を徹底するときだ。

 過熱傾向が続く一方で、米欧の景気減速や国内株式相場の下落で「8月の北京五輪後に景気が腰折れするのでは」との懸念が杞憂(きゆう)と言えなくなりつつある。

 景気の過熱とインフレを抑えつつ景気の急減速を避けるには、細心の経済運営が必要になる。3月に「今年は経済運営が最も困難な年になるかもしれない」と語った温家宝首相の手腕が問われている。

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