Jパワー(電源開発)について政府は、同社株の追加取得を計画している英投資ファンドに、投資内容の変更・中止を勧告した。
この問題で関税・外国為替等審議会(外為審)は「送電線をはじめとする基幹設備の運用や維持、原子力政策に不測の影響が及ぶ可能性を否定することはできない」という判断を示している。
現在の9・9%から20%までの買い増しを政府に申請している英投資ファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド」(TCI)が勧告に従わない場合、政府は変更・中止命令を出すことになる。
空港運営会社に対する外資規制を導入しようとした国土交通省が、結論の先送りを余儀なくされたように、外資規制についての論議は大きく分かれている。
電力会社は外為法で外資規制の対象となっており、政府の勧告はこれに基づいている。しかし、外国人投資家の日本市場離れを加速すると、批判も強い。
株式市場で外国人投資家が売買の主体となっているのは確かだ。しかし、これは、膨大な貯蓄が国内にありながら、それが株式市場に向かわないため生じた現象でもある。
株安と外資規制を単純に結びつけるのは、一面しか見ていない論議だ。市場の不振の原因について責めを負っている人たちが、その言い訳としているような感もある。
外資規制について外為審が判断したのは、初のケースだ。Jパワーは本州と北海道、四国、九州を結ぶ送電線網を持ち、原子力発電所の建設計画も進めている。高効率の石炭利用技術を持ち、今後の環境外交の観点からも重要な会社だ。
しかし、外為審が指摘する問題点は、外資に限ったことではない。短期的な収益を狙った株の大量取得が問題なら、国内のファンドなども規制対象にしないと筋が通らない。
また、経済産業省の一転した対応ぶりも、日本の行政運営に対する不信を増幅している。外資規制緩和の旗振り役で、Jパワーの民営化の際にも競争促進に傾斜していたからだ。
海外からの投資促進による日本経済の活性化をめざし規制緩和を進めたわけだが、その進め方に問題がなかったのか、検証する必要がある。
ただし、投資促進とはいえ、安全保障への配慮も含め公益性の高い企業に対する買収規制は、どこの国でも行っている。問題は、その場しのぎではなく、ルールを明確にし、透明性の高い運用が行われているかだろう。
いずれにしても、日本にとって最もマイナスなのは、外資規制で国内が揺れるたびに、それが海外で報じられ、日本市場の閉鎖性がやり玉にあがることだ。
その繰り返しを断ち切ることが必要だ。
毎日新聞 2008年4月17日 東京朝刊