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【暮らし】

妊婦もシートベルトを 正しい着用 事故時に効果

2008年4月17日

 妊婦もシートベルトを着用して−。日本産科婦人科学会は今月発行した「産婦人科診療ガイドライン」で、妊婦のシートベルト着用を推奨している。これまで妊婦は着用しなくてもいいと思われていたが、着用の効果と正しい着用法を確認した。

  (杉戸祐子)

 「妊娠後期の腹部とハンドルとの距離は約十五センチ。シートベルトを着用していないと、少しの衝撃でも腹部をハンドルに強打する」

 独協医科大学の一杉正仁准教授(法医学)が妊娠三十週前後の女性二十人の運転席での体勢を調べると、ハンドル下部と腹部の距離は平均約十五センチで、妊娠していない女性よりハンドルに約十センチ近かった。

 この時期の妊婦に模した人形を使い、停車中に後続車両に時速約二十キロで追突されたという想定で事故の実験をすると、ベルト非着用の場合には人形の腹部がハンドル下部にめり込んだが、着用時にはベルトが作用し、接触が避けられた。

 道路交通法では妊婦も着用を義務づけられているが、実際には同法施行令で免除されている。一杉准教授は米国のデータとして「ベルトを着用しない妊婦の胎児死亡率は、着用した妊婦の四倍以上」と紹介し、「正しく着用すればマイナスの影響はなく『妊娠中』が着用を免除する根拠にはならない」と主張する。

 太田西ノ内病院(福島県郡山市)に二〇〇六年末までの十一年半の間に自動車事故で搬送された妊婦六十九例(ベルト非着用は三十例)のうち、胎児の死亡は三例で、二例はベルト非着用で子宮破裂や胎盤早期剥離(はくり)を起こした(一例は母体も死亡)。残る一例はベルトを着用していたが、胎児が脳挫傷を負った。

 同病院救命救急センターの篠原一彰所長は、着用していて胎児が死亡した例を「ベルトが子宮にかかって胎児の頭を圧迫した可能性がある」と分析、「正しく着用すればまず妊婦が守られ、胎児への悪影響も少ないと予想される」と話す。

      ◇

 同学会ガイドラインには、交通事故による妊婦の負傷者は年間一万−七万人、死亡者は約四十人などと試算。「正しい装着で事故時の障害を軽減化できる」と記載された。

 試算した沖縄県立南部医療センターの村尾寛・産婦人科部長は「正しい装着法の効果を産婦人科医が広く知るべきだ」と語り、同法施行令のベルト着用義務の免除対象について「(現状の)『妊娠中』から『異常妊娠』に修正するべきだ」と主張する。

 

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