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2008年4月17日

◎東海北陸道7月開通 金沢、石川の起爆剤にもなる

 七月五日の全線開通が決まった東海北陸自動車道は金沢市や石川県にとっても、にぎわ いや活力を呼び込む起爆剤になることを認識したい。北陸自動車道との結節点が富山県内となるため、石川県では岐阜や富山県ほどの高揚感はみられないが、五箇山や岐阜県高山市などでは金沢ブランドを生かした広域観光への期待も高まっており、そうした沿線地域との関係も考えれば、むしろ石川県側の好影響が大きいように思われる。

 トンネル工事の影響で開通は三カ月以上遅れたが、金沢や石川の魅力をPRする準備期 間が延びたと考えれば大したことはない。北陸道と連結する小矢部砺波ジャンクションから富山西インター、金沢東インターまでは等距離であり、開通日が決まったからには石川県も沿線地域と同じ意識をもち、開通効果を最大限に引き出す手立てを着実に講じてほしい。

 東海北陸道の開通で北陸は二つの高速ルートをもつことになり、行きは北陸道、帰りは 東海北陸道という選択も可能となり、広域観光は多様化するとみられる。金沢市が観光交流協定を結ぶ高山市との所要時間は四十五分短縮され、小松空港の台湾定期便就航により台湾客に人気の金沢―高山ルートはさらに利用が見込めるだろう。

 金沢・富山県西部広域観光推進協議会は「加賀藩」の歴史を切り口に誘客を進めている が、かつて「奥座敷」「秘境」のイメージが強かった五箇山は「北陸の玄関口」となり、加賀藩文化圏の拠点である金沢や石川への誘導地点にもなる。世界遺産の合掌集落と城下町金沢の町並みという風情の異なる組み合わせは、中京圏からの観光客の人気を集めるだろう。

 高速交通網を地域づくりにつなげるという点では、東海北陸自動車道開通に伴う活性化 策は、北陸新幹線開業へ向けた一つの試金石となる。言うまでもなく魅力の高い地域の方に人やモノが流れるのであり、うかうかしていると経済や人口規模も大きな中京圏に資源を吸い取られることになりかねない。石川県や金沢市はポートセールスや企業誘致も含め、戦略をしっかり練り直してもらいたい。

◎Jパワー株買い増し 国益にかなう中止勧告

 英投資ファンドTCIによるJパワー(電源開発)の株式買い増し問題で、政府が外為 法に基づき中止勧告を出すことに決めたのは、妥当な判断である。Jパワーは全国に発電所六十七カ所、延べ二千四百キロの送電線網を所有し、青森県では使用済み燃料を再処理する原子力発電所を計画中の極めて公益性の高い企業であり、中止勧告は国益にかなう。

 日本市場の閉鎖性や海外からの投資拡大の奨励と逆行するなどの声もあるが、そうした 批判は、羽田や成田空港への外資規制などには当てはまっても、産業インフラの基礎である電力には通用しない。電力の安定供給ばかりでなく、最先端の核技術を有し、核燃料の管理を託されている企業への外国資本の大規模な投資を認めるわけにはいかないのは当然だ。

 財務省の関税・外国為替等審議会(外為審)が懸念したのは、長期的視野で考えるべき 電源開発事業と、短期的利益を追求する投資ファンドの経営戦略がかみ合わない点にある。原発などは二十年、三十年先を見越した投資をしなくてはならないが、TCIが海外で行ってきた投資は短期で利益を上げ、撤退するパターンが多い。

 強引に役員派遣を求め、経営陣を揺さぶる手法もよく知られており、米国の鉄道会社の 株を買い増したケースでは、役員を送り込む方法をめぐって訴訟合戦が起きている。経営スタイルは、投資ファンドというより、ヘッジファンドと呼ぶ方がよりふさわしい。

 TCIは中止勧告を受けて、「日本市場の閉鎖性」を国際社会に訴える考えのようだが 、ヘッジファンドへの批判は国際社会でも強く、TCIの主張がそれほどの説得力を持つとは思えない。日本側は「公の秩序の維持」や「安全保障」をタテに、堂々と主張していけばよい。

 ただ、Jパワーほどの公共性の高い企業を完全民営化し、外国資本に目をつけられたの は大きな反省材料だろう。経営の効率化と引き換えに、不安材料を抱え込んでしまった。現行の規制だけで問題点はないのかどうか、点検しておく必要がある。


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