【シンガポール=藤本欣也】中国・チベット問題の抗議活動により欧米諸国で混乱した北京五輪の聖火リレーが17日、世界最多のチベット難民約10万人が居住するインドで行われる。これを前に聖火リレーが行われる首都ニューデリーでは16日、亡命チベット人らが中国大使館に突入しようとして警備当局と衝突、約60人が拘束されるなど緊張が高まっている。
報道によると、聖火リレーは、当初予定していた9キロのコースを3キロに大幅に短縮して行われる。
中国との経済的結び付きを強めるシン政権は対中関係を優先させ、約5000人の厳戒態勢を敷いて聖火リレーへの妨害行為を阻止する構えだ。
チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世が亡命するインドでは3月のチベット騒乱以降、チベット人らの抗議デモが各地で繰り返されてきた。
これに対し、インドのムカジー外相が3月末、「ダライ・ラマ14世はインドの尊敬する賓客である」とした上で、「インドと中国の関係を損なうような政治活動はすべきでない」と亡命チベット人にクギを刺した。中印両国は1962年に国境付近で武力衝突した歴史を抱えるが、今ではインドにとって最大の貿易相手国が中国となっている事情が背景にはある。
しかし、「世界最大の民主主義国家」の看板を掲げるインドだけに、中国の人権問題やチベット人の言論・表現の自由も無視できないジレンマを抱えている。野党側は「中国追随外交」と政府を強く非難しているほか、国民の間でも意見は分かれているようだ。
ロイター通信によると、都市部住民約550人を対象にしたインド誌の最近の調査で、71%が「ダライ・ラマの存在は中印関係を損なっている」と認識しながらも、64%がインド政府に対し「チベット人の対中抗議活動を停止させることは望まない」と答えている。
聖火ランナーについても、サッカーのインド代表チーム主将らが辞退する一方、映画スターのアミル・カーン氏は「中国のために走るのではない」と表明するなど論議を呼んだ。
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