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霞ヶ関の食物連鎖

Jパワーの審査を行なった外為審の外資特別部会の部会長が吉野直行氏だと知って、90年代に郵貯についての討論番組をつくったときのことを思い出した。当時、郵貯が巨大化し、財投が無駄な特殊法人の資金源になっているという批判が強く、専門家にも郵貯を擁護する人はほとんどいなかったが、たったひとり郵貯を擁護していたのが(郵政省の審議会の委員をしていた)吉野氏だった。

サラ金の2割がつぶれて「官製不況」の原因になっている貸金業法改正の「懇談会」の座長をつとめたのも吉野氏だ。ここでも彼は、規制強化したい金融庁や後藤田正純氏など自民党の意を受けて議論を誘導し、改正後に「闇金が増えている」というNHKの番組に出演して「高利で借りる人を市場から排除するのが今回の改正のねらいだ」と公言した。

そして今回のJパワーの件で吉野氏は、記者会見で「原子力事業は20年から25年の長期にわたって考える必要があるが、(TCIが志向している)3〜5年の投資では、長期投資を控え短期的な配当を多くするよう行動する」と断定した。これに対してTCIのジョン・ホー氏は「そんな説明はしていない」と否定し、「それなら株を取引するのを20年間禁止する法律が必要ではないか」と反論した。

吉野氏も経済学者なら、ホー氏のほうが正しいことぐらいわかるだろう。吉野氏のような論理が成立するなら、電力会社の株主はみんな株を20年以上もっていなければならない。それに彼は、TCIの買い増しで「原子力政策に不測の影響が及ぶ」と何を根拠に断定したのか。TCIの目標としている20%では拒否権も行使できないし、ホー氏は「株式を信託して重要な意思決定には関与しない」と約束しているのに。

要するに、吉野氏は経産省があらかじめ決めた結論に合わせて理屈をつけ、北畑次官の「資本鎖国論」を学問的に偽装したのだ。それが御用学者の処世術というものだろう。おかげで彼の所属する慶応の経済学部には、無内容なプロジェクトにCOEで2億円も研究費がついて、同僚が使い道に困っていた。

通産省は80年代から「規制緩和」の旗を振って許認可権をみずから手放してきたが、最後に残った規制の砦が電力である。私の体験では、会社の効率の悪さは、トップに取材するとき広報や秘書が並ぶ数でわかるが、かつて東電の平岩会長にインタビューしたときは、7人も並んだ。これは銀行やNTTをも上回る最高記録だ。

そういう「恐竜」の既得権を守って経産省は残り少ない天下りポストを死守し、それに異議をとなえる外資を排除することで、御用学者は食物連鎖の末端でおこぼれにあずかっているわけだ。彼は霞ヶ関では、あちこちの審議会に引っ張りだこで、大御所になったつもりかもしれないが、官僚が裏では「吉野さんは便利だからね」と笑っているのを知っているだろうか。
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コメント
 
 
 
日本版政府ファンドの設立を望む (チュー新井)
2008-04-17 00:29:47
どうせなら、外国為替資金特別会計を原資とした政府系ファンドを設立して、JパワーにTOBを仕掛けてほしいものです。

ファンドの名前は、「攘夷ファンド」でお願いします。
 
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かくして我が国は衰退する。 (ド・シロート考え)
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