発売後1年半経っても進化を続ける希有な存在。それがPS3である。4月15日に公開されたシステムソフトウェアアップデートによってついにDTS-HD Master Audio/High Resolution Audioのデコードに対応(
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ストリームの直接出力こそできないものの、PCMマルチチャンネル音声への変換を実現し、実質的に同等の高音質再生を可能にしたのである。今回のアップデートはPS3でBDを楽しむ映画ファン、音楽ファンにとって大きなプレゼントであり、いまや発売当時とは別物となった感のあるPS3の価値がこれでまた上がったと言ってよい。
いつも通りの更新作業を終え、DTSの最新デモディスク(BD版)を再生、ディスク情報を表示すると、音声信号の部分に「DTS-HD MA」という表示が出ている。アップデートの作業は僅か10分ほどで終わるのだが、あらためて考えてみると、ソフトウェアの更新だけで今回の対応を果たしたことには大いに感心せざるを得ない。プレーヤー/レコーダーはストリーム出力の実現に苦労し、AVアンプはそのデコードを実現するまで長い時間を要した。PS3でもたしかに時間はかかったが、デバイスを一切変更せずにここまでたどり着いたのは見事である。
DTSのデモディスクにも収録されている『ヘアスプレー』は、待望のパッケージ版が先週末に発売されたので、すでに入手された読者も少なくないと思う。PS3の再生音はボーカルの音像が適度に引き締まって、ロッシーなフォーマットとの格の違いは明らかだ。トレーシー役ニッキー・ブロンスキーをはじめ、声はいずれも高音の明るさとなめらかさに大きな違いがあり、コーラスの厚みと力強さにも圧倒される。ミュージカル映画のなかでも別格と言っていいほどテンポ感の良い作品だけに、ロスレス音声でリズム楽器の粒立ちと推進力が向上すると、各場面のつながりの良さと爽快なスピード感がいっそう際立ってくる。
ダンスシーンの色乗りの良さなど、画質にも目を見張るものがある。これは今回のアップデートとは直接関係ないと思うが、現在の基準で見比べてみても、PS3の画質は最新機種と肩を並べるか、場合によってはそれらを上回るクオリティと密度の高さを見せることがある。
DTSのデモディスクでも同じ印象を受けたし、同じくDTS-HD MAで収録されている『ダイ・ハード4.0』の音を確認したときも、特にディテール感と暗部の色乗りの良さなど、画の良さにあらためて感心した。筆者が自宅でBDを見るときはパナソニックのDMR-BW900を使うことが多く、最近はPS3の出番が減っていたのだが、これからはPS3にも昨年のようにもう一度活躍してもらう必要がありそうだ。両機種の画質はほぼ拮抗するレベルにあるし、動作レスポンスの良さでは依然としてPS3に軍配が上がる。
ドルビーTrue HDとDTS-HD MAという主要な2つのロスレス音声のデコードに対応したことで、特にPS3を従来仕様のAVアンプ(HDMI1.3非対応モデル)と組み合わせているケースでは大きな音質改善が実現する。その意味で今回のアップデートは見過ごすことができない。