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医療事故調試案/公正・中立な調査で安全を(4月16日付)
医療事故の真相を解明する第三者機関の「医療安全調査委員会」(仮称)、通称医療事故調の試案を厚生労働省がまとめた。
現代医療の進歩は目覚ましく、かつては治すすべがなかった患者も救えるようになった半面、患者に有害な結果を引き起こしている例も少なくないのが現実だろう。
医療事故については現在、刑事捜査と民事訴訟に委ねられているが、真相解明や再発防止の点でまだまだ不十分だ。
本県では2004年12月、県立大野病院で帝王切開で出産した女性が死亡したことで、産婦人科医が業務上過失致死と医師法違反の罪に問われ、先月開かれた公判で、検察側は医師に禁固1年を求刑した。弁護側は公判の中で「癒着胎盤の予見は不可能で、手術にミスはなかった」と、一貫して無罪を主張している。
医療事故は、医療する側と患者側が異なる見解を示す。その意味からも、公正・中立な医療事故調は設置が待望されている機関で、医療の安全向上、信頼回復に結びつくはずだ。
厚労省の案は昨年の2度の試案に次ぐ第3次案だ。医療事故調査の資料が捜査や民事訴訟に使われるのに反発した医師らに配慮し、事故調査が捜査に優先することを示した。個人より組織の問題を重視し「医療関係者の責任追及を目的としたものでない」と明記した。
医療事故は、ほかの分野に比べても件数と死者が多いのに特徴がある。明るみに出るのはごく一部にすぎない。医療に間違いはないという神話から早く抜け出す時だ。
今回の案によると、医療機関は(1)医療過誤が疑われる(2)医療後に予期しなかった死亡―について届け出の義務を負う。医療事故調に届けた場合、医師法21条の警察への「異状死」の届け出を免除する。遺族が調査を依頼できるようにもした。
当面、医療事故調が扱うのは患者が死亡した場合に限られる。それでも年約2000件に上ると厚労省は推定する。まず解剖などで資料を収集。専門医を中心としたチームが事例ごとに調査して報告書を公表する。医療事故調には法律家や患者の側に立つ有識者も加わる。
医療事故調は(1)改ざんや隠ぺい(2)過失事故を繰り返す医師(3)故意や重大な過失―などで悪質な場合、警察に通知する。刑法や民法の体系は変わらないので、遺族に刑事告訴や民事訴訟を起こす権利はある。しかし、医療事故調の結果が尊重されるため、事実上の権利制限につながりかねない。
死亡以外の医療事故も多い。国の事故調とは別に、各病院が独自に事故調査を進めて「隠さない、逃げない、ごまかさない」姿勢を徹底してほしいし、事故調に頼り過ぎるのも避けたい。
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