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変わるキタ・ミナミ・関西:大阪・天王寺に日本一のビル

 ◇不安残るオフィス需要

 これまで梅田や難波に押されがちだった大阪市の阿倍野・天王寺地区。近鉄百貨店の入る近鉄阿部野橋駅ビルが高さ300メートルの日本一の高層ビルに生まれ変わるほか、事業開始から30年以上たつ市の再開発も最終段階に入り、阿倍野歩道橋も屋根付きの独創的なデザインに変わる。キタ、ミナミに次ぐ“第3極”の街並みを一変させる開発ラッシュは、しかし、不安な要素も抱える。【上田宏明】

 建て替え前の史上最大の売り尽くし--。営業面積日本一の巨大百貨店へと生まれ変わる近鉄百貨店阿倍野本店は2月後半、こう銘打って大々的なセールを行い、再生への気分を盛り上げた。

 巨大ビルは建設費だけで800億円前後に達するが、近畿日本鉄道の小林哲也社長は「勝算はある」と断言する。日本一という話題性をテコに、1日の乗降客数が梅田(約250万人)、難波(約100万人)に次ぐ約80万人を擁しながらも掘り起こしきれずにいた需要を喚起し、開業3年後にはビル単体での黒字化を目指す。

 だが、地元は期待と不安が相半ばする。天王寺駅前商店街振興組合の木島誠司理事長は「開発で街並みが変わるのは楽しみ」としながらも、「そのにぎわいが阿倍野・天王寺全体の活性化につながるかどうか……」。

 不動産アナリストも「梅田や難波と決定的に異なるのは、オフィスの少なさ。乗降客は80万人と多くても、大半は通過するだけではないか」と指摘する。

 JR西日本も、老朽化した天王寺駅ビルの改修を検討中で、一時は大規模に増床して建て替える案もあった。だが、すぐ北側の近鉄の駅ビル計画発表後は腰が引けつつある。年内には改修の概要を固める方針だが、「目の前に巨大ビルが建つことになり、需給の見通しを立てるのが困難になった」(JR西首脳)と悩む。

 こうした弱点は近鉄も把握し、シャープや早稲田大学などの有名銘柄をリストアップして新駅ビルへの誘致に懸命だ。しかし、オフィス需要の中心は御堂筋沿線でも「新大阪から難波まで」で、難波より南では厳しいというのが通説だ。

 “通過点”から脱却し、にぎわいを生む街になれるか。今はまだ、関係者の間に温度差と思惑が交錯する。

 ◇阿倍野・天王寺地区の主な開発計画◇

08年秋 ファッションビル「Hoop(フープ)」南側に近鉄百貨店の新商業施設が開業

10年度 大阪市の再開発計画による商業棟などが開業。イトーヨーカ堂、東急ハンズなどが入居予定

   同 阿倍野歩道橋が架け替え

14年春 近鉄の日本一の高層ビルが開業

毎日新聞 2008年4月5日 大阪朝刊

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