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調書引用:「取材源との約束違反」 講談社調査委が指摘

「僕はパパを殺すことに決めた」の検証結果を報告する講談社の第三者委員会の奥平康弘委員長(右)=東京都新宿区で2008年4月9日午後4時49分、三浦博之撮影
「僕はパパを殺すことに決めた」の検証結果を報告する講談社の第三者委員会の奥平康弘委員長(右)=東京都新宿区で2008年4月9日午後4時49分、三浦博之撮影

 講談社(東京都文京区)は9日、奈良県田原本町であった少年(17)による母子3人放火殺人事件を取り上げた単行本「僕はパパを殺すことに決めた」(草薙厚子著)の出版の経緯を検証してきた第三者による「調査委員会」(委員長・奥平康弘東京大名誉教授)の調査報告を公表した。報告書は「取材源との約束に反した重大な出版倫理上の瑕疵(かし)がある」と指摘した。同社は「チェック機能に問題があった」と落ち度を認め、近く担当幹部を処分するという。

 事件は06年6月に発生。昨年5月に出版された同書は、自宅を放火した少年の供述調書を大量に直接引用した。その結果、調書の提供者として少年を精神鑑定した崎浜盛三医師(50)が同10月、奈良地検に秘密漏示容疑で逮捕され、起訴された。また、少年審判の非公開を規定した少年法の精神を軽視するとして、表現方法に批判が出た。

 報告書は▽草薙さん側と医師との間では「供述調書を直接引用しない」などの約束が成立していたが、これに反する本作りが行われた▽供述調書を掲載することに対して、部内の議論が決定的に欠落していた▽少年や被害者へのプライバシー侵害への配慮に欠ける▽タイトル、カバーや帯などの作りは営業優先(商業主義)の姿勢を強く印象づける--と認定した。また、吉岡忍委員(ノンフィクション作家)は「(執筆は)草薙さんだけでなく、編集者との二人三脚で、第三者の視点での検討がなされなかった」と指摘した。

 講談社の中澤義彦常務は会見で、再発防止を図るため社内に「出版倫理委員会」を設置したことを明らかにした。【臺宏士、阿部亮介】

毎日新聞 2008年4月9日 23時22分(最終更新 4月10日 0時04分)

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