有毒ガスの硫化水素による自殺が全国で相次ぐ中、府内でも11日夕までに7件発生し、20歳代の6人を含む7人が死亡した。高濃度のものを吸うと即死する恐れがあるなど極めて危険性が高いため、府警や消防は2次被害防止策を現場に通知するなど対応に追われている。また、自殺対策に取り組む専門家も「むやみに周囲の人の命を脅かすことはしないで」と訴えている。
府警などによると、今年に入って京都市内で5件、京田辺市と南山城村で1件ずつ起きた。特に3月20日以降は5件と急増。市販の家庭用品を混ぜ合わせて硫化水素を発生させる方法だった。
京都市消防局によると、硫化水素は腐った卵の様なにおいがする可燃性の気体。電気のスイッチを入れただけでも燃えることがあり、場合によっては爆発する。異臭や自殺を知らせる張り紙に気づいたら、すぐにその場を離れ、風上等の安全な場所に避難することが大事。2次被害を防ぐため、扉が開いている場合は閉めることも重要という。
府警は先月28日、各署の地域課員向け資料に、硫化水素の性質や発生時の対応方法を掲載。速やかに住民を避難させることなどを伝えた。京都市消防局も先月下旬、同様の通知を出した。
一方、自殺予防などの電話相談に取り組む「京都いのちの電話」。10日午前には硫化水素自殺をほのめかす相談が寄せられ、同一人物かは不明だが、その後右京区の女子大生が自殺しているのが見つかった。
平田真貴子事務局長は「残された人の悲しみは行き場がない。死のうと思い悩んだら、相談してほしい。一緒に助かる道を探しましょう」と呼びかけている。
相談は075・864・4343。毎月10日はフリーダイヤル(0120・738・556)も受け付ける。【細谷拓海、珍田礼一郎】
毎日新聞 2008年4月12日 地方版