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【記者ブログ】偏向報道と報道統制、どっちが罪深い? 福島香織 (3/4ページ)
■これら外国メディアの虚偽報道を暴いたネチズンたちは、世の人にラサ事件の真相を知らせようと行動している。しかしこの主張は論理的でないところがある。なぜなら、彼らの行動は、ただ、人々に西側メディアの報道が事実ではないと知らせることだけが目的となっているからだ。
■ラサでいったい何がおきたのか?大勢の中国人はただ政府の封鎖された情報を数日後、統一発表した記事で見ただけである。単一の独占的な新聞発表の情報源について、私はそれがウソだとはいわないが、しかし真実だと確認もできない。じっさい、海外メディアの多くが、これを「中国政府が念入りに編み出した真相」と言っている。
■その後、政府が組織した外国プレスツアーで、彼らの報道の多くは翻訳されてこなかった。西側メディアを世論で叩くブームの熱波で頭がかっかしており、たとえ翻訳されても、ほとんどの人は信用しなかっただろう。
■ 怒りはいまだ拡散している。アンチCNNサイトは「我々は必ずしもメディアそのものに反対ではなく、いくつかの非客観的な報道を批判しているだけだ。われわれは西側人民に反対であるのでは決してなく、偏見に反対しているだけだ」との声明を出しているが、実際のところ、そういうレベルではなくなっており、多くのネチズンはこの声明に相反する方向に走り、ひどい場合は最初からまったく逆の立場にたっている。
■つまり、ネチズンたちは、本当のところニュースの客観公正などまったく気にせず、メディアの立場にこだわっている。つまり、偏見を受けつけない、というのではなく、ポイントはどの方向に偏っているか、ということである。
■もし、本当にニュースの価値という立場にたてば、ネチズンたち西側メディアの虚偽報道を暴くだけではなく、中国政府の情報源と国内メディアの2重の統制も疑わねばならぬ。疑いなく、後者(統制)のほうが前者(西側メディアの虚偽報道)よりも、ニュースの価値をさらに著しく損なうものである。
■まさにすでに発生した(アンチCNN世論の)事実のように、メディアの虚偽報道に対する矯正は相対的に容易であり、幾人かの忍耐強く注意深い中国ネチズンは実際にそれをやってきたわけだ。だが、報道統制に抗議することで向き合う相手は、国家権力であり、世界中どこであってもどうしようもない、と叫ぶばかりだ。
■一部中国民衆はすでにわかっているだろうが、虚偽報道と偏見は最も恐ろしいものではないのだ。ただ、開放的な世論環境があり、十分な指摘と討論が許されれば、それらは真相と公正にむかう機会があるのだ。今回ネチズンは外国メディアに対する反撃に成功した、これはとてもよい例である。
■最も早くに問題を発見し、素早く反応したのは、海外の中国人留学生だった。彼らは問題をあばく動画をつくり、BBSに流し、Youtyubeのようなネットサイトでも放送。かりにこれらネットメディアが統制を受けていれば、こうした問題を暴くプロセスは多くの困難にあっていただろう。
■これら(指摘された欧米メディアの)虚偽報道はニュース価値を最も損なうものであり、多くの人に客観公正への信頼をさらに放棄させるものであり、狭隘な民族主義的立場を選択させたものである。ネチズンらが得た結論は、世の中の価値なんて、すべて人を騙すばかばかしいものだ、ということであり、ただ国家利益を奪い合うだけである、ということだ。ネチズンらは、ついには、この考え方をもって、ウソをつくことすら、一種の国際慣例だといい、自分の身の回りにある、あるいは歴史上にある(中国の)ウソも納得するのである。
■もちろん、一部の人はもともとこのように考えているし、今回のメディア事件は、彼らにまた一つ論拠を与えたわけで、この証拠に基づいてまたほかの人に話すのだ。
■しかし、私がみたところでは、この機会により広い討論と深い思索を行おうという中国人も多い。西側の人間の中国に対する偏見は、中国を見下した一種の文化的優越感に源を発することがわかったが、なら、警鐘をならすべきは、漢族が少数民族に向き合うとき、この種の文化的優越感で偏見を誘導するようなことはないだろうか。
■西側の人々の中国に対する歪曲報道は、耳を傾け理解しようとせず、サイド(Edward W.Said)の語るその種の東方主義の想像に耽溺してしまうのが原因だが、なら、我々は少数民族に対してどうであろうか?
■もし、われわれが民族主義という武器で西側に反抗するならば、少数民族に民族主義を放棄して、主流の国家建設に加われとどうして説得できようか。ダライラマは、政府に対し、再度自分を評価するように求めているが、ならいったい彼はどのような人物なのか?当局が定めた人物像以外に、メディアが自由に討論してさらに一歩真相を指摘することは許されないのか?
(長平:南方週末新聞部主任、外灘画報副編集長を歴任後、現在、南都習慣の副編集長)
(以上)
■さて、この論評は発表直後から「反華論文」「売国奴論文」と激しいバッシングにあった。しかし、それだけでなく、擁護論もすぐにおきた。で、ネットの各地で激論バトルが始まったのだ。
■どんな風にネット上のバトルがおきたかというと、
■4月4日、中華ネットのあるネチズンがブログに「警告!南方都市報はまさにさなぎから反華メディア反華勢力の国内代表人に孵化した」という批判文章を発表し反駁を展開。
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