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【産経抄】4月16日
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人をだましてカネ儲(もう)けしようという悪いやつらは頭がよく切れる。きのうから75歳以上の後期高齢者(この名をつけたお役人はよほど頭が悪いか横町のご隠居が登場する落語を聞いたことのない人種だろう)の年金から医療費の保険料天引きが始まった。
▼全国の自治体には、苦情が殺到しているが、混乱に乗じて一儲けを企(たくら)む輩(やから)が大勢いる。東京都文京区では区の職員だと名乗って「医療費の還付金があります」と甘い言葉をささやき、銀行やコンビニのATM(現金自動預払機)に誘い出そうとする電話が多くの家庭にかかっている。
▼「還付金を戻すための手数料」と称していくばくかのカネを振り込ませる手口の詐欺だが、ひっかかる人が後を絶たない。十分気をつけていただきたいが、お役所や税務署は頼みもしないのに「還付金がありますよ」と電話で知らせてくれるほど親切ではない。
▼お年寄りを不安にさせた責任は、2年も周知期間があったのに、ろくすっぽ説明してこなかった政府にある。満額支払われているか怪しい年金から保険料はきっちり引くのだから振り込め詐欺まがいだが、野党が「お年寄りをいじめるな!」と叫ぶのもみっともない。
▼ガソリン税を下げて道路もつくれ、保険料を下げて老人医療費はタダにしろ、と言うのは簡単だが、政治は手品ではない。税金をどれだけとって何に使うかを冷徹に判断し、国民を説得するのが政治家の仕事だ。
▼超高齢化社会を迎え、働き手は減っても社会保障費が減ることはない。これを誰がどう負担するのか、国会は論議をさぼっている。働きたくないなら、議員を半数にして浮いた歳費を還付した方がいい。与野党ともたまには国民のためになる仕事をしてみてはいかがか。