残業代の一部を積み立てて旅費に充てられたとして、国立療養所帯広病院(現・国立病院機構帯広病院)の勤務医だった男性医師(37)=埼玉県飯能(はんのう)市=が病院を運営する独立行政法人・国立病院機構(東京都目黒区)に52万円の損害賠償を求めた訴訟の和解が15日、札幌高裁(末永進裁判長)で成立した。機構側が「違法な会計処理」を認め、医師に31万円を支払い陳謝した。
この裁判では、病院側が各医師に月2万円ずつ残業代から積み立てさせ、学会出張などに充てる「旅費運用資金」を事実上の裏金としてプールしていた違法性が問われた。国から旅費が支給されても医師側に渡さず、資金に繰り入れていた。1審・札幌地裁判決(07年2月)は「積み立てを求めた行為は詐欺に当たる」として組織的裏金作りを認め、機構側が控訴していた。
和解後、医師は「実質的な勝訴と確信している」、病院は「コメントは差し控えたい」(管理課)とのコメントを出した。
この問題を巡っては、医師が当時の院長らを業務上横領容疑などで告訴。釧路地検は07年3月、不起訴処分(嫌疑不十分)とし、帯広検察審査会も今年1月、不起訴相当と議決している。【芳賀竜也】
2008年4月16日