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【社説】

食糧高騰 『外から買う』が危うい

2008年4月16日

 米大統領が食糧危機に瀕(ひん)するアフリカなどへの緊急支援策を打ち出した。英国の首相は食糧問題を北海道洞爺湖サミットの議題にすべきだと訴えた。日本も食糧調達の危うさを直視せねばならない。

 今月に入り、アフリカのチュニジアでは食品の値下げを求めるデモが暴動に発展し、警官の発砲で二人が死亡した。エジプトでは安いパンを求める人々が列をなし、けんかによる死者も出た。中米ハイチでは首相解任につながった。コメ輸出国のタイやベトナムは国内向けを優先し、輸出削減に踏み切っている。

 食糧高騰がもたらす混乱を早急に収めたい。アフリカと関係が深い英国のブラウン首相からそんな危機感が伝わってくる。世界銀行のゼーリック総裁は七月のサミット前に大阪で開かれる八カ国財務相会議でも議題とするよう求めた。サミット議長を務める日本の首相は真摯(しんし)に受けとめ、対策づくりを主導しなければなるまい。

 小麦やトウモロコシの市場価格は二〇〇六年に比べ二倍になった。小麦は主要生産国のオーストラリアが二年連続して干ばつに見舞われたことが影響している。

 米国のサブプライムローン問題を機に行き場を失った投機資金が穀物市場に押し寄せ高騰に拍車をかけている。トウモロコシがバイオ燃料の原料に回されて品薄となり、そのあおりで大豆の生産面積削減という悪循環も招いている。

 日本は穀物の多くを輸入に頼っており、めん類やパン、しょうゆ、食用油などの値上げが止まらない。投機資金の対策などサミットで議論すべき課題は山積しているが、同時に、日本も先進国中最低の食料自給率39%という厳しい現実と向き合うことが不可欠だ。

 二〇〇〇年に消費量の30%を超えていた世界の穀物在庫は国連食糧農業機関が安全水準とする18%を下回った。中国など新興国の旺盛な消費に生産が追いつかない。

 長く続いた「外国から買える」という日本の食糧調達が危うくなり、絶対不足の領域に移りつつあることを知るべきだろう。

 日本の農地のうち埼玉県の広さに匹敵する三十八万ヘクタールが耕作放棄地だ。生産基地を遊ばせているのが現実であり、そんな余裕はなくなっていると言うほかない。

 農政をめぐり与野党は激しく対立しているが、世界の食糧事情を見据えれば早急に対策を講じるべきだ。食糧政策を与野党一体で打ち出す覚悟を見せてもらいたい。

 

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